宇宙原理があなたの中を貫流する

このブクロを通じて宇宙を網羅する基本法則を提示していきたい。

第一章 トーナメント形式とシステム [5]外部とも内部間でも相互作用する複雑系システム

[5]外部とも内部間でも相互作用する複雑系システム
[個体の発達順序は系統発生(進化順序)に従う]
◎個々の生物の発達順序(個体発生)は系統発生(進化順序)に従う。部分(個人)は全体(集団・組織)の統制下にある。生物進化は言語創発(誕生)が最後に来る(今のところ)。とはいえ、鳥において基本形は見られる。人の言語機能は大脳新皮質にあり、その内発信を受け持つ部位は前頭葉にある。
[自身の内部に要素的部分を分節して、システムを細分化複雑化する]
◎日本式家屋はふすまによって部屋に仕切りを入れる(間仕切りする)。生物も、特に未分化な段階(時期)では、全体がそれ自体の内部に要素的部分を(大部屋に仕切りをいくつも入れて小部屋を作るように)分節して、システムを細分化複雑化する。
[組織化・結合を目指す複雑系科学]
複雑系科学は、要素の細分化(分解)・還元化(トップダウン)とは逆向き、組織化・統合化(ボトムアップ)を目指す。分野が余りにも細分化されすぎた(横に広がりすぎて互いのつながりが切れてしまった)ことの反省から生まれた複雑系は、種類が異なるいくつもの要素が互いに相互作用することによって、さまざまな新しいものを形成(創発)する。
創発とは、要素が単独では単純な働きしか示さないのに、多数の要素が集団として働くとき、上位階層構造を生み出したり、新しい意味や機能をもつ複雑なものを産出したりすることである。
◎相互作用は、互いに相手にとって原因となり結果となる影響である。
[同一階層間と上位・下位の拠点・階層との相互作用]
◎すべての要素は同一階層上で相互作用(ネットワーク)し合うが、上位・下位の拠点・階層とも相互作用(フィードバック・フィードフォワード)し合う。フィードフォワード(ボトムアップ)は前方・上方へ向けて情報を送り出し、フィードバック(トップダウン)は後方・下方に向けて情報を送り返す。横へ向けての情報送信(水平発信)をネットワーク(リーグ形式)発信と名づけよう。
[影響のキャッチボール]
複雑系システムでは,要素間の相互作用によって全体の活動が生み出される。次にはその全体的活動によって個々の要素の活動が影響される。このように要素(下位)と全体(上位)間にはフィードバックが繰り返されるという循環(影響のキャッチボール)がある。
[原因と結果のドミノ倒し]
◎影響のキャッチボールは組織の会議を思い浮かべられるとよい。個々のメンバー(要素)が出す提案が全体で討論され決定されると、それが全体の実行すべき目標となる。さらに個々のメンバーが実施した結果の反省が会議で報告されて、それが目標の変更へと至る。
[脳の神経細胞同士は同一階層上にも上下方向にも連結・発受信する]
◎脳(複雑系システム)の神経細胞同士はネットワーク状(同一階層上)にも上下方向(異階層間)にも連結・発受信する。さらに身体は内部間だけでなく、外部に対して部分開放して外部環境と常に物質・エネルギー・情報についての相互作用(異化=分解/同化=合成)を続けながら自己維持・成長・発展をはかる。
[経験をもとにして情報を学習し記憶する動的システム]
◎動的システムは誕生時の依存(情報受信)状態から始まり、経験をもとにして情報を学習し記憶することによって自律してゆく。生物進化がウィルス・プリオンのような半(不完全・寄生)生物から開始したように。
[依存は発信よりも受信の方が多い状態]
◎依存は情報・物質・エネルギーの発信よりも受信の方が多いことであり、受動的・開放的である。外部依存的システムは使えば使うほど活動すればするほど(情報を吸収して)発達し自律する。もちろん記憶装置を持っていることを前提するが。
[変化しながらも均衡的維持をはかる動的平衡システム]
動的平衡システムは、環境に対して選択的に開かれ(部分的開放系)て、環境と相互作用することで動的に変化する。所が、システム自体は内部(体内)環境を常に一定範囲内に安定的・均衡的維持をはかるホメオスタシス(恒常性維持)機能を持つ。起き上がりこぼしのように。
◎平衡とは、もはや変化しない状態である。だから動的平衡システムは、変化しながらも、その変化の方向が最も安定な状態へと移行・維持しようとする。
[あらゆるシステムは矛盾的自己同一する]
◎動的(変化)と平衡(恒常)とは相反・矛盾するが、宇宙においてはあらゆるものが、そのような相反・矛盾する性質を合わせ持つ(矛盾的自己同一する)。
[機能を部分的に抑制・停止・依存化・限定する分業で共同作業を行う各要素]
◎システム全体として目的にかなう機能を発揮するために、システム内の各(下位)要素は、全体構造(上位階層)から規制を受けて自律的機能を部分的に抑制・停止・依存化・限定する。企業(全体)が倒産すれば、そこの社員(要素)はたちどころに路頭に迷う。
[各要素は適応的調和の下で秩序体系を作り出す]
◎また全体は各要素がお互に適応的な調和の下で、分業し共同作業をしながら一つの秩序だった体系を作り出し維持する。一個の時計(全体)と各部品(要素)との関係を思い浮かべて下さい。
[各要素がある程度の自律性を持つ階層型自律分散システム]
◎要素にレベル差がある階層型自律分散システムは、階層構造的に複数個の下位システム(要素の集合体)に分散し、それらにある程度の自律性を持たせる。影響範囲が狭い限定的情報に関してはその責任範囲にある下位システムが独自目標に沿って処理する。成熟に向かうシステムはすべてこの方向を向く。階層型自律分散システムは宇宙の基本構造である。
[上位は下位を目標達成に向けて行動統制する]
◎下位システムは行動結果を簡略・要約した形で上位システムに送信する。上位システムは普遍的目標が達成される方向で各下位システムの行動を統制・統合する。人の脳、人の体は階層型自律分散システムであり、動的平衡システムである。
[一局集中処理システム]
◎階層型自律分散システム(民主主義体制)に対して、下位で受発信した情報を上位に集中管理させ、下位に指令を送る(トップダウン)方式を、分散処理に対して一局集中処理と呼ぶ。
◎この場合、下位は情報の価値判定を行わず、すべて生のまま送り出す。専制・独裁政治はこの一局集中処理方式をとる。このシステムは小規模の場合には有効である。
[一局集中方式は要素が成長しない]
◎がしかし、この一局集中方式システムではトップのみが肥大化(過度の中央集権化)し各要素がすくすくと自律し成長し成熟してゆくことがないので、ある段階で成長は止まる。そうなれば、階層型自律分散システムへ移行するか、崩壊を待つかである。
[生物は階層構造を持ち、階層間は互いに情報・物質・エネルギーをやり取りする]
◎生物は複雑系システムであり内部に階層構造を持ち、上下階層は互いに情報・物質・エネルギーをやり取りしながら、他の階層を制約し合う、階層型自律分散式動的平衡システムである。進化するほどに階層は深くなり各要素は多様に分散自律する。
[開放性・全体性・階層性・能動性・目的性という特徴を持つ一般システム]
オーストリアの理論生物学者ベルタランフィ(1901-1972)は「一般システム論」を提唱する。物理学・機械技術・化学・生物学・心理学・社会科学などから横断的・縦断的に取り出されたシステムの共通性・同型性を原理化した。そのようにして取り出されたシステム一般の基本特徴は、定常状態にありながらも動的な開放性・全体性・階層性・能動性・目的性である。
[全体がなければ部分は存在しない]
◎ドイツ哲学者ヘーゲル(1770-1831)は「大論理学」でいう、「全体がなければ部分は存在しない」と。
◎しかし、ヘーゲルよりはるか昔、古代ギリシアの哲学者アリストテレス(前384-前322)が、全体は部分の寄せ集め以上の存在であると、すでにいっている。
◎全体(普遍)がなければ、部分(個)とは呼べない。だがしかし、部分(個)が支える・相互作用することなしに全体(普遍)は存在しえない。
[複雑系は全体が分節されて部分ができる細胞分裂のように]
複雑系システムでは、部分が足し合わされて全体(部品の組み合わせの機械論)になるのではなく、全体が分化・分節されて部分(分化成長発展する有機体論)ができる。つまり、全体が先にある。
◎だから、還元的、足し合わせて全体を作る人工システムが自然システムに近づくには、動的平衡(変化しつつも常に統合する)機能を取り入れなければならない。ロボットはそういう点では自然に近づこうとする。
[全体は部分に対して上位で包括的な位置にある]
◎全体性は社会・国家を個人の総和として見るのではなく、それらを部分に対する上位に位置する全体だと見なす。機械還元システムでは全体は部分の総和であるが、生命システムでは部分は複雑に絡み合い(ネットワークし階層構造化し)ながら全体の中に統制統合(トーナメント形式化)される。
[全体は部分を階層構造的に調和させる]
◎全体(構造)は部分(素材)を上位から包み込む存在である。環境は生命の上位システムであるように、すべてのシステムは究極的には一つの大きなシステム(宇宙)の要素として階層構造的に調和を保つ。
◎物理学者のジェフリー・チューは「ブーツストラップ」(靴ひも)を使う、全体の構造が部分の相互関係の全体的調和によって決定されることを表すために。一方の紐を引っ張ると、その力は一カ所に留まらず全体へ分散されて伝わる。
[より複雑な形式へ、より高位の階層へ、より大きな統合へと駆り立てる生命力]
◎動物の進化の大きな側面は、脳の複雑化、階層化、巨大化である。「能動性・目的性」を秘める生命は絶え間なくより複雑な形式へ、より多重な階層へ、より大きな統合へと駆り立てる躍動力である。
[生物は素材を取り替え続けながらも恒常性が維持される開放システム]
◎生物は、構造用素材が壊れ(分解し)てはまた再生産(再結合)される流れで、絶えず構造用素材を取り替え続けながらも恒常性が維持される開放システムである。こう見て来ると生物はベルタランフィのいう「一般システム」に合致する。