宇宙原理があなたの中を貫流する

このブクロを通じて宇宙を網羅する基本法則を提示していきたい。

第二章 要素・素材の組合せと統合 [8]混沌の感覚情報の統合と統合情報による秩序ある世界像の形成

第二章 要素・素材の組合せと統合
[8]混沌の感覚情報の統合と統合情報による秩序ある世界像の形成 
[物には質感・重さ・位置関係の情報が付加されてゆく]
◎生まれつき盲であった人で、生後数年たってから初めて視力を獲得した場合、ある程度時間がたつと、物の形はわかる。しかしなかなか質感・重さ・位置関係(遠近・前後・左右)は読み取れない。
[体験を重ねて種類の異なる情報を脳内に統合して蓄える]
◎言葉を覚えるように何年もの手や足で物に触れた体験を重ねて、物の硬さ重さ温度などの種類の異なる性質・情報を脳内に統合して蓄える。それによって物を見たときさまざまな感覚情報がまとまった形で提示される。
[実感は、体験してさまざまな感覚情報を取り込み過去の知識体系に組み込む]
◎分かるは、頭(左脳)で知識として分かるのと、体(右脳)で体験して実感するのとがある。実感は、体を動かすことでさまざまな感覚情報が取り込まれ、それらが過去の知識体系に組み込まれ、具体的な統合された経験となる。
[納得・意味づけ・把握は知識体系に情報が適切に納まること]
◎納得するとは、知識体系の中に情報を適切に納めるべき所に納める。意味があるとは、知識体系の中に事柄が関係づけられる。把握するとは、部分を寄せ集めて一つの全体として組み立てる。だから分かっても納得できない場合が多い。
[英語を修得するとは、英語機能が下位システムとして構築される]
◎英語が理解できる、英語を修得したとは、英語の知識が体系的に脳に記憶され、英語機能(英語知識体系)が無意識的・自律的下位システムとして構築される。ここまで教え込まないと、使える能力とはならない。学校教育は分かる指導(左脳教育・細切れ教育)にとどまって体得に至らないことが多い。
[情報を過去のデータと照合して意味を判断する]
◎人では感覚機能は多様に分化されると同時にそれらが統合される。それぞれの感覚は個別に一次感覚野と二次感覚野を持つが、三次感覚野(連合野)は異種間情報が統合される。二次連合野が損傷すると意味の喪失が起こる。そのわけは、二次連合野が感覚情報を過去のデータと照合して意味を理解したり、それに対処する判断を行うからである。
[三次連合野で視覚・聴覚・触覚が集まって諸感覚の連合が作り出される]
連合野は情報を取捨選択し、きめ細かな判断を下す。頭頂葉にある三次連合野(頭頂連合野)は視覚・聴覚・触覚(体性感覚)が集まって諸感覚の連合が作り出される。例えば、体性感覚(触覚・圧覚・温覚・冷覚・痛覚・運動感覚)と視覚の機能が結合することによって、立体的な認知ができるようになる。上位にゆくほど統合力が増大する。
[頭頂連合野はものを統括的にまとめ上げる機能を持つ]
◎頭頂連合野は、感覚情報を統合してまとめ上げる機能を持つ。例えば、音を連続したメロディーとして、リズムを持つ調和された響きとして。音は耳で電気的信号に変えられて、第一次聴覚野に到達し、そこで分析され、さらに純音・単音→複雑音・和音・(不)協和音→メロディー・テンポ→主題音楽へと順次まとめ上げられる。
[一次聴覚野で音のカオスが、三次連合野ではメロディ(秩序)となる]
◎一次聴覚野で音のカオスであったものが、三次連合野ではメロディ(秩序・有機的統合)となる。一次感覚野優位の者と三次感覚野優位の者とが同じものを見ても聞いても味わっても全く違う世界に浸る。一次感覚野優位者はベートーベンの「田園」からは単なる無意味なぶつ切りの雑音を聞き、三次感覚野優位者はヒバリのさえずりを聞く。日本人は虫の音をメロディーとして聞き、欧米人は雑音として聞く。
[メロディーは一つの音が次の音と溶け合い融合して有機的な統一を持つ音の流れ]
◎フランスの哲学者ベルクソン(1859-1941)がいう、「相互浸透的な諸要素が切り離されることなく融合し、異質的状況を生みだしていく流れ」であるメロディーは、一つの音楽的なまとまりとして形成されるさまざまな音の集合(流れ)、一つの音が次の音と溶け合い、融合し合って有機的な統一を持つ音の流れである。リズムは、音の長短や強弱によって音の時間的流れに秩序を与える。秩序とは統合である。
[視覚機能と聴覚機能が合体する脳内自動翻訳機]
◎小説を読むと、右脳が活発に活動する人は文字が映像化する。「山」という文字を見ると脳裏に山の映像が映し出される。あるいは、そろばんの熟練者が暗算をすると、脳内で数字が自動的にそろばん化する。数字を見る聞くだけで映像化されたそろばんの珠が自動的に動く。脳は訓練するとこのような能力を発揮する。
[専門家は多くの機能・領域を統合して働く]
◎高度に訓練を積んだ演奏家は楽譜(音符)を読むと、頭の中に音楽的響きが生まれる。視覚情報(音符)が聴覚情報(音)に翻訳される、視覚機能と聴覚機能が合体する脳内自動翻訳機を持つ。
[高い能力を要求する作業にはより広範囲の脳が協同して働く]
◎文字言葉の意味の理解は視覚連合野で行われる。むずかしい文章の理解は側頭葉や前頭葉も同時に働く、このように高いレベルの脳(能)力を要求する作業ほど、より多くの機能・領域が統合して働く、訓練次第で。
[体性感覚的世界像を形成し、その上に自我を視点とする視覚的世界像を作る]
◎誕生後体性感覚的(触感を中心とした)世界像がまず形成される。さらにその上に自我を視点とする視覚的世界像を作り積み上げる、親ガメの上に子ガメが乗るように。そして視覚的世界像が基準となる。盲人の場合は聴覚的世界像も作られるだろうが、依然として体性感覚的世界像の方が基準として使われるかも知れない。
[視覚的世界像が揺らぐと体制感覚的世界像が返り咲く]
◎見た物が逆さまに入力される逆さ眼鏡をかけたときのように、視覚的世界像が正しさの基準にならないと、以前に作られた体性感覚的世界像が判断基準として返り咲く。その世界像に合致するように視覚情報を修正する。このようにして、優位の逆転、基準の退行(過去への逆戻り)が起こる。これらの事柄は感覚情報が階層構造を成すと暗示する。