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第三章 普遍・基本形と特殊・変形 [14]生まれ持った内在的本能と誕生後に学習した外在的知識

[14]生まれ持った内在的本能と誕生後に学習した外在的知識
[本能は、遺伝的で個体差がなく、学習・経験で大きく変更しない]
◎生得的内在的知識(本能)は視床下部・脳幹・大脳辺縁系に存在するが、意識には上がってこない。本能は、遺伝的で個体差がなく、学習や経験によってあまり大きく変更しない行動・傾向である。人間は、内在的反射と本能による(行動)階層から外在的経験と学習による上位階層へと大きく乗り越えられる。
[内容の組み替えが不可能な固定的本能と、可能な少々柔軟な本能とがある]
◎本能は、内容の組み替えが不可能な完全固定的本能と、要素的組み替え・入れ替えが可能な少々柔軟な本能とがある。というよりも、生得的内在的本能に、どれだけ後天的外在的経験が加味されうるかが種によって異なる。
[配線が固定的か組み替え可能かの違い]
◎人間の脳内ニューロンや、高等動物の神経回路は可塑性(変化可能性)があって生後の学習や経験につれて配線がどんどん組み換えられてゆくが、体に寄生する回虫・ギョウ虫・十二指腸虫のニューロンは生まれた時すでにほとんど配線(結線)済み(固定的・不変的)である。
[欲望は、欲しいものに飽きたらまた別の物が欲しくなる]
◎欲望は中身の入れ換え、欲しいものが宝石→ドレス→車へと一つに満足し飽きたらまた別の物が欲しくなる。これは、鳥の本能で、親を決定する刷り込みの中身(何を親と見なすか)が決定されていないと同じである。
[一度決定したら変更しない本能と組み替え可能な経験]
◎鳥の場合は親を決定したら二度と変更しないが、人間は難儀なことにそれに決定しても次々と配線を組み替えられる、これに飽きたら、また次を求めてさまよう。これほど柔軟性があるのも善し悪しである。
[内容の組み替えがほとんど不可能な固定的本能]
1)美しい花には棘があるようにおいしいウニも、雲・船・魚などによって頭(?)上が暗くなると、棘を突き出して反応する。しかし棘を向ける対象はさほど特定されていない。
2)「飛んで火に入る夏の虫」は機械的生得的走光性を持ち、自然の光であろうと、蛍光灯であろうと、炎であろうと、それに向かってゆく。中身は問わない。普遍(光一般)が本能として与えられるが、特殊情報(自然光・蛍光灯・炎など)までは指定されない。
3)コオロギの歌の種による違いは遺伝的に決められる。成虫の声を聞かせても幼虫の成長後に唄う歌には影響を与えない。一途である。メスの受信回路の配線も遺伝的にきちんと指定される。可塑性のない(新しい情報を取り込まない)閉鎖回路である。浮気は絶対しない律儀者である。
[内容の組み替えが可能な少々柔軟な本能]
◎コオロギの神経節は単純な運動パターンが内蔵されるが、進化した脳段階では、パターンを組み立てる(作曲用)神経回路を持つ。神経節は単語を内蔵するが、脳は文法(結合法則)を使う。
4)魚は学習できるが、いったん学習した内容は本能行動のように固定化されて取り消しが効かない。一回まで書き込み可能なCD-Rのようなものである。それに対して、人間の脳はCD-RW(書き直し可能)で何回でも書き換えが効く。
5)アヒル・ニワトリ・ガンなどのひなは、生後初めて見た動くものを親として後追い行動する。この場合でも後追いは本当の親に特定されていない。何に対してかという内容情報は盛り込まれていない空白のまま生まれる。経験に左右される。
6)シロガシラ(スズメ目ヒヨドリ科)は同種のオスの声を特定の期間に刷り込む。このレベルまで来ると内容に相当柔軟性がある。それは巣立ち後2週間から15週間頃までに同種のオスの歌を記憶し、成熟期になるとそれを手本として、自分の声を聞きながら(フィードバックしながら)鳴き方を学習・訓練する。この段階ではCD-RWを持つといえよう。
[脳内に生得的な深層的言語構造があり、それが言語の習得を可能にする]
7)アメリカの言語学者チョムスキーは言語については脳内に生得的な構造があり、それが言語の習得を可能にするという。個々の(国・民族の)言語文法(特殊)を総括する普遍的言語文法(イデア)が存在すると彼は考える。
[潜在的言語能力は言語体験によって開花する]
◎人間は言葉を学習する能力を潜在的可能性として持つが、どの言語を学習するかは指定されていない。(種・人類として)言語能力が潜在する(深層構造・イデアとして持つ)が、言語体験に巡り会わ(表層構造・特殊を形成し)なければ開花しない。
[どの国民も任意の言語を母国語とできる]
◎言語能力は具体的な言葉を放り込んでやらないと機能しない。空テープの入った録音再生可能なプレーヤーである。それ故に、アメリカ人の両親を持つ赤ん坊が日本語を母国語とすることも可能である。
[中核となる基本文型から派生文が変形の規則に従って生まれる]
◎中核となる基本文型(抽象的な深層構造:普遍)から派生文(具体的な表層構造:特殊)が変形の規則に従って生まれる。例えば、第三文型に個々の具体的語句を当てはめることで無限の文が生産される。鋳型と成型品の関係である。
[人間も独自の本能を持っても不思議はない]
8)動物は、種独特の本能を持つ。そうなれば、人間も独自の本能を持っても不思議はない。スイスの精神医学者で分析心理学の創始者ユング(1875-1961)の提示する「元型」(イメージの泉)は遺伝的に備わり、集合的(普遍的)無意識由来の心像の型(普遍・イデア)であり、民族・文化・国境・時代を超えて物語・神話・民話・儀礼などの主題・題材(特殊)の中に繰り返し現れる。