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第三章 普遍・基本形と特殊・変形 [15]内在的深層(普遍)構造と外在的表層(特殊)構造

[15]内在的深層(普遍)構造と外在的表層(特殊)構造
[個々の具体的なものの背後に普遍的な法則・構造がある]
◎フランスの人類学者クロード・レヴィ・ストロースは、さまざまなシステムが実際には要素を変換することによって同一の関係、同一の深層構造を持つ、個々の具体的なものの背後に普遍的な法則・構造がある、特殊は普遍を分有することを浮かび上がらせた。
[飼育チンパンジーは初歩的文法(多層言語構造)の修得も可能]
◎人に飼われるチンパンジーで、二百の単語を覚え、初歩的文法規則(文型)すら修得したものもいる。幾分か抽象能力・概念化能力があり、しかも概念を用いての思考・洞察もできて、複雑な意思伝達能力すら持っているという。
[野生のチンパンジーの言語構造は単層線形システム]
◎野生のチンパンジーの方は、三六個の音声で情報を伝達し合う。方言もあるらしいが、それぞれの音声はひとつの固定した意味しか持たず、それらを組み合わせて新しい意味・単語を作り出すことはない。その言語構造は単層線形(リーグ形式)システムである。野生では潜在的能力が高くともそれを開発する手段を持ち合わせていないのだろう。また必要性もない。必要は発明の母。
[大きな発達には格段の違いを持つ指導者が必要]
◎野生の世界、自然界では自分たちより格段にレベルの高い同種の仲間が教師役になって教えることはない。子供が親を模倣するのは自然なことだが、人間がイヌの訓練をするほどの格段の違いを持つ指導者と学習者との関係になれる動物間の師弟関係は見当たらない。
[動物たちも訓練次第で高い学習能力を発揮する]
◎イヌもチンパンジー潜在的にはかなり高い学習能力を持つのだろうが、残念ながら彼らには(それを鍛え上げる)手本がない。たまたま人間を教師役に雇えた動物は他の仲間よりもかなり高いレベルにまで到達する。その動物が今度同種の仲間に対して教師役になれるかが問題である。
[鳥は人間の言葉と同じ構造(階層構造)をもつ]
◎鳥の歌は構造と内容を持つものも多い。音節→単語→歌と、人間の言葉と同じ構造(階層構造)をもつ。単語の並べ替えで、多様な歌を作る。ヨシキリ(スズメ目ヒタキ科ウグイス亜科ヨシキリ属)では十くらいのフレーズで何百もの歌を作る。
[鳥は言語形成能力の点でチンパンジーより秀でる]
◎ヨシキリ属もさらに下位分類され、何種類もいるが、さえずりは種によってかなりはっきりと異なる。これなどはある程度の文法(単語の結合法則)を持つことを暗示する。この点においては、ヨシキリはチンパンジーよりも秀でている。
[人間では言葉は自発的に発達する]
◎人間の場合でも、言葉は意図的に開発しなくても自発(自然発生)的に発達する。六ヶ月でマムマムなどの喃語を発し、一歳で単語をしゃべり、一歳半で状況の中でふさわしい単語を使い、二歳で二語文を使いこなし、三歳までには文をしゃべれる。
[言葉として理解するために学習によって特別な神経回路網を形成]
◎耳(鼓膜)から音が入ると一次聴覚野が活動し音として感知する。そこまでは他の動物もなしえる。人間の場合には、それを言葉として理解する(言葉とそれ以外の音とを分類する)ために学習によって特別な高次神経回路網(参照元・言語辞典)を形成する。
[小学校高学年でも言語用高次神経回路網は形成可能]
◎先天的完全聴覚障害(聾)があった十歳の少年が人工内耳手術を受けて、五年後には聴覚(高次階層)連合野が活発に活動するようになった。これから判断すると、十歳を過ぎても言葉を理解する高次神経機構が形成される可能性は残されている。この場合には意識的努力が必要であったろうと思うが。ともかく自然発生(ボトムアップ処理)と意識的努力(トップダウン処理)との違いは残る。
[耳から入る言葉がしゃべる基本情報]
◎一般的には耳が聞こえなければ言葉はしゃべれない。耳から入る他人の言葉がしゃべる基本情報(言語辞典)になるからである。所が、次の例から判断すれば、そうとばかりはいえないようである。アメリカの社会福祉事業家で、一歳半頃に盲聾唖(見えない聞こえないしゃべれない)となったヘレン・ケラー(1880-1968)は七歳の時、手にかかる冷たい水(体性感覚情報)と、サリヴァン先生が書いた「水」(water)という文字(触覚的言語情報)がつながった、肉とベル音が意味的に関連あるものとしてつながったように。
[言葉用神経回路網は言葉を受容することによって形成される]
◎前に示したような例外はあるものの、一般には、人は言葉の学習に大切な2〜3歳以前に聴覚能力を失うと自然発生的には言葉用神経回路網は形成されない。言語が入って来ても言葉として処理する機能(言語辞典)がないので理解できない。
[手話でも言語用神経回路網が形成]
◎しかし、手話を習うと、それが言葉用神経回路網を形成する。音声言語でも、手話言語でも、点字言語でも、それらを(意志によって意識的に)学習すると、自然に言葉用神経回路網は形成される。これらを考えると、人間では潜在的深層言語構造を持つといえそうである。意志あるところ自ずと道は開ける。意志の上にも三年。
[文の理解と単語の理解が同時に必要]
◎単語(部分)を理解するためには文(全体)の解釈が必要である。所が、文の解釈には単語の理解が必要である。卵が先かニワトリが先か。ホラ貝か蚊取り線香のようならせん型循環としてとらえるべきだろう。左脳は切りたがるが、右脳はつなげたがる。
[単語・句・節・文は同時的に解釈する]
◎解釈は単語→句→節→文のように、単純から複雑へと順に進めてゆくのではなく、同時並列させて(四車線同時に解釈車を走らせて)解釈を進める。そのために互いに情報交換(相互フィードバック)を行ない、それらをつき合わせすり合わせて決定する。文を作る際、この作業は脳内で自動的に行なわれる。
[言語システムは重層的構造(階層構造・トーナメント形式)]
◎近代西欧文化に意識の転換をつげ知らせる(特に西欧中心的歴史観を崩壊させた)社会革命的構造主義は、システムを幾つかの部分から全体を成り立たせる重層的構造(階層構造・トーナメント形式)として捉える。言語も(単語・句・節・文と)階層的・重層的構造である。