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このブクロを通じて宇宙を網羅する基本法則を提示していきたい。

第三章 普遍・基本形と特殊・変形 [19]退行・ネオテニー(脱構築)は普遍(潜在的可能性)への里帰り

[19]退行・ネオテニー(脱構築)は普遍(潜在的可能性)への里帰り
[意識低下には二種類ある]
◎意識の低下は、ふつう睡眠のように下へと降りる・階層を下降する。がしかし意識を残しながら(目覚めたまま)降下する・階層を深くする場合がある。それは電池でいえば、直列方式から並列方式へのつなぎ直しである。
[低い覚醒は両半球の交流が活発になり、意識の守備範囲が広くなる]
◎高い覚醒は両半球の交流が悪く相互に独立するが、覚醒が低いと交流が活発になり、情報が相互に流れて意識の守備範囲が広くなる。
[瞑想・創作目的での退行は降下と同時に意識が拡大する]
◎退行は、困難な状況や情緒的混乱に立ち至ったとき、エレベーターの下降ように行動が発達上のより以前の状態に戻る下剋上である。それに対して、瞑想・創作目的での退行は降下と同時に意識が拡大する領土拡大である。真珠取りの海女のように海底まで潜り、底で真珠貝を見つけ出しそれを海面・海上にまで持ち帰る。この持ち帰りが大切であり、海面まで来たら落としてしまったのでは何もならない。
[感覚遮断は高次心的機能を低下させる]
◎心理学が行う感覚遮断実験では、意識の活動が障害され、不安感・暗示性の高まり・注意力や思考力の減退・幻覚・無気力・時空間の認知障害など高次心的機能の低下(低次機能には影響がない)状態に陥る。
◎簡単な例では、私はお経を聞くと感覚遮断状態に入る。生徒では授業時間になれば感覚遮断を体験する者もいる。脳は常に情報(それも新しい新鮮なやつ)を求める。精神活動は外界から絶えず刺激情報を受容することで成り立つ。
[下剋上的退行は高次心的機能の低下が起こり、低次機能が活性化・優勢化される]
◎退行はこの感覚遮断実験に似る。不安感から高次心的機能の低下が起こり、影響を受けない低次機能が活性化・優勢化される。
◎所が、瞑想をある程度体験すると、そのような無(情報不在・感覚遮断)に慣れる。ただし、無が訪れるまでには無意識に沈んでいた諸々の記憶が泉の如く次々と湧き上がって来るが。このような感覚遮断(無の訪れ)が意識的にできるようになった時点が悟り(の一要素)である。
[退行は過去への里帰り]
◎ある小学六年の男の子は、お兄ちゃんが不登校中しっかり者で問題のない子であった。しかしお兄ちゃんが登校し始めると、あたかも次は自分の番だといわぬばかりに、退行を始め、母親に「スプーンでまんまを食べさせて欲しい」とまで甘え出した。母親はその子の希望を次々にかなえてゆくと短期間で元の小学六年の男の子に戻った。
[空洞を埋めるのは愛]
◎お兄ちゃんが不登校の間、両親の関心・注意はほとんど兄に注がれたのだろう。弟の心は竹のように節と節の(お兄ちゃんが不登校の)間は満たすものがなくがらんどうだった。でもそれに彼は耐えた。しかし両親の愛が受けられるようになって、その空洞を埋め始めた。
[心の空洞は埋められることを望んでいる]
◎この話から昔話を思い浮かべる。竹から、桃から生まれた子供たちはあれよあれよという間に成長してゆく。これは身体的成長ではなく精神的成長を暗示するのだろう、心(精神年齢)が肉体(実年齢・身体年齢)と同じ大きさにまで戻ったことを。
[子どもを空洞にするのは親の心自体も空洞だから]
◎あの弟のように心が空洞(愛情欠如)になった子どもたちが繁華街や援助交際やメル友によって満たそうとさまよう姿が目に痛い、心に苦しい。子どもたちと本気で関わらない親たちがあまりにも多い。親の心も同様に空洞なのだろうが。この親たちの空洞はだれが埋められるのか。ここに宗教の存在意義があると思うのだが。
[問題への解決は、起こった現場へ立ち戻る退行から始まる]
◎前進前の後ずさり、飛び上がり前のしゃがみ込み。他人の愛に後ずさりし、コンビニ前にしゃがみ込む子どもたちは多い。問題への解決は、それが起こった現場へ立ち戻る退行から始まる。
[欠如は求め、満足はあふれ出す]
◎子どもたちには、両親との何気ないおしゃべりが、いっしょに料理を作るなどの日常的な行動が冷えた空疎な心には温かいスープであるのだが。それすら求めても得られない悲しい現実がある。欠如は欲求として吹き出す。満たされた器は他人に分け与えられる。余剰エネルギーは外にあふれ出る。
[変態せずに幼形のまま成熟]
◎ずいぶん以前のことになるが、テレビコマーシャルで登場し、その仕草のおかしさ・かわいさから人気沸騰したアホロートルはメキシコ産サンショウウオの一種である。それは変態せずに幼形のまま成熟し生殖する能力が表面化する。原因は甲状腺機能が抑制されるからで、甲状腺ホルモンを与えると変態する。
[ヒトはサルからの幼形成熟的な変化の結果だという胎児化説]
◎オランダの解剖学者ボルク(1866-1930)は、ヒトの頭部の大きさ・好奇心は、サルからの幼形成熟的な変化の結果だという胎児化(普遍化)説を発表する。昆虫は多足類(ムカデなど多数の脚をもつ節足動物)のネオテニー形だと見なされることもある。
[幼形成熟は、特殊化しないまま幼形を保つ]
ネオテニー(幼形成熟)は、特殊化しないで幼形を保ったまま大人になる。特殊化することによって動物はある特定の環境に固定・拘束・限定される。動物によっては同じ環境状況を維持するために渡り(白鳥・ツバメ)・回遊(サケ・サンマ)をするものもある。
[昆虫は、幼若ホルモンと変態ホルモンを持つ]
◎昆虫では、幼若ホルモンが幼若形姿をそのまま持続させるが、変態ホルモンは成虫へと脱皮を促進させる。カイコ(鱗翅目カイコガ科の蛾)の幼虫は、幼若ホルモンがあればさらにそのまま幼虫として留まり、なければ絹糸を口から吐いてまゆを作りその中でさなぎとなり、そこから蛾となって飛んでゆく。
[人間はチンパンジー幼形成熟である]
◎ボルグはいう、チンパンジー幼形成熟(特殊化されないままの成熟:普遍化)したものが人間である。魚はホヤの幼生(子ども)から進化した。ホヤの幼生はオタマジャクシのような姿で尾っぽに脊索を持つので自由に動き回る。は岩にへばりついて変態をした後、イソギンチャクのようにそのまま岩にしがみついて生きる。このように新しい種(特殊)はそれまでの種の幼形(普遍)から進化することも多い。
[幼児はさまざまな潜在的可能性を持つ]
◎幼児はさまざまな潜在的可能性(普遍性)を持つ。動物は本能が完成品や半製品として手渡されるが、人間にはどのようなものにでも組み立て自由なレゴ(部品)セット(大きな潜在的可能性)が与えられる。そういう点からしても、人間は幼児に似ている。大人になってもおもちゃ(潜在的可能性)で遊ぼう。凝り固まらずに。
[宇宙(自然)は、基本形(普遍・元型)を作って変形・変換(特殊化)する]
◎宇宙(自然)は、基本形(普遍・元型・イデア)を作って、それを環境に合わせて変形・変換(特殊化)する。特殊→普遍→特殊へと、製造した品物(特殊)をいったん普遍の貨幣と交換(脱構築)してあらためて望みの品物を手に入れる。
[生活環境を変え、それに合わせて変態する]
◎両生類は水中生活(幼生期)から陸上生活(成体)へと生活環境を変え、それにふさわしく変態する。トンボは水中生活から空中生活へと場を変える。セミは地中生活から空中生活へと引っ越す。チョウは地上生活から空中生活へと場を転移する。人間も地上(地獄)生活から天上(楽園)生活へと、自我から自己へと脱皮すべきなのだが。脱皮完了の合図が悟りです。
[可塑性を取り戻すために過去へ退行]
◎大きな可能性を持つ幼児から可塑性(変形する能力)が減少する大人へ進行する。いったん固定してしまった形から変化・変更・刷新するにはその前に過去への退行(若返り・後ずさり・しゃがみ込み)が必要なのだろう、可塑性を取り戻すために。
[退行は固定から柔軟への若返り]
◎退行は、固定性から可塑性へ、正から反(分離)へ、肯定から疑問(否定)へと向かう。一般に進化的上位の生き物ほど脳(上位階層)に大きな可塑性を持ち、下位の生物ほど身体(下位階層)に可塑性を持つ。
[分岐した種は幹に復帰した上で再上昇(進化)]
◎幹から分岐(枝分かれ・特殊化)した種が、ネオテニーという形で幹に復帰(普遍化)した上で、上昇(進化)し再度分岐するのが進化形式なのではないか。トンビが大きく突然変異した卵を生み、その卵がかえってタカになる。小さな進化では枝が分岐(小枝別れ)することによって進むのだろう。
[生ごみはたい肥にならずにうじ虫になった]
◎ハエの幼虫はウジ虫である。私はウジ虫についてほろ苦い経験を持つ。かつて生ゴミからたい肥を作ろうとポリバケツにせっせせっせと生ゴミを集めてある程度溜まったところで密封した。
◎そろそろたい肥になっているかもと封を解いて、開けてびっくり玉手箱であった。中にはびっしりとウジ虫がうじうじとうごめいているではないか。これは大変退避退避とばかり再度きっちり密封した。
[生ゴミはみごとハエに変態した]
◎さてどうなったやらと恐る恐る封切りをして見ると、申し訳ないことに、ハエに変態したまま大変な死体の山であった。生ゴミはみごとハエに変態した。生ゴミがハエにリサイクル(食物連鎖)された。かくして自然の驚異を恐意をもって、現実のすごさを実体験(実感)した。しかし、夢はもっとすごいことをして見せる。私は夢で腐った玉ねぎが神様に変身するのを見てしまった。
[昆虫はその系統発生を誕生後も続行させる]
◎ハエなどの昆虫はミミズから進化した。個体発生は系統発生を繰り返すというが、昆虫はその系統発生を生まれた後も続行させる。卵の中で親と同じ段階にまで進化過程(系統発生)を経過せずに、途中段階のウジ虫として生まれ、その後でそれを通過する。
[ハエはミミズ→ムカデ→体の三分節化→昆虫へと誕生後に系統発生する]
◎昆虫は、環形動物(ゴカイ・ミミズ)→多足類(ムカデ)→体の三分節化(頭・胸・腹)→昆虫(羽無し→羽あり)(トンボ・チョウ)へと進化する。昆虫の幼虫はミミズとムカデの中間に位置しそうである、つまり足の生えたミミズ。
[卵生から胎生へは大きな進化]
◎誕生後の卵生から胎生(主にほ乳類)への大幅な飛躍はとてつもない進化である。とはいえ、その途中に卵胎生という中間形態もあるが。自然は一挙の変化をしない。ハエがするような変態の原因は、多量の卵を生むために一つひとつの卵にたくさんの栄養を与えられないので、発生の途中(未完成)で卵からかえる。