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第三章 普遍・基本形と特殊・変形 [20]普遍的幹細胞から特殊化細胞へ下降する

[20]普遍的幹細胞から特殊化細胞へ下降する
[生きる構造の最低単位は細胞]
◎生物(生きる構造)の最低単位は細胞である。細胞の構成要素は、水(約70%)・タンパク質(15%)・核酸(7%)・糖質(3%)・脂質(2%)で、その中でタンパク質が最も重要な役割を果たす。人では細胞におよそ五千種類もタンパク質が含まれる。単細胞生物は細胞内でさまざまな機能を果たすタンパク質を作る。
[死滅してゆく細胞を補う役割を担うのが幹細胞]
◎細胞は寿命(無情)があり常に失われるので、それを持続的に補わなければならない。所が、血液細胞や肝細胞など、特定の機能を果たす特殊化(分化)細胞は増殖能力がない。そのような細胞を補う役割を担うのが幹細胞で、それは胚性幹細胞と体性幹細胞とがある。幹細胞と特殊化細胞との関係は、女王バチ(アリ)と働きバチ(アリ)との関係である。
[胚性幹細胞は体性幹細胞より上位に位置する]
◎体性幹細胞は未分化な胚性幹細胞(ES細胞・万能細胞)が一段分化(階層を一段降下)して特殊化した。器官・組織内にある体性幹細胞は、特殊化細胞を何種類も生産増殖する能力を持つ普遍細胞である。
[全能性受精卵は分化しながら階層を降りて行く]
◎特殊化・分化の方向は、受精卵→(一般・多能性)胚性幹細胞→(特殊化)体性幹細胞(造血幹細胞・組織幹細胞・神経幹細胞など)→前駆細胞→特殊化細胞(赤血球・感覚細胞・神経細胞・筋肉細胞・内分泌細胞・表皮細胞・肝臓細胞など)へと階層を降りて行く。
[胚性幹細胞は無尽蔵に増殖可能である]
◎受精卵は全能性細胞で、胎児を作り出す能力を持つが、分裂を始めてから数日後のES(胚性幹)細胞はすでに一段階層が下がっており全能ではない。いくぶんか限定しているとはいえ、器官・臓器・組織など多種の細胞に変化する能力を保持した(大きな可塑性を残した)まま無限で無尽蔵に増殖し続ける細胞の生産工場である。
[増殖した細胞群が特殊化して専門の器官を形成]
◎幹細胞(未分化で成熟しないまま増殖する点でネオテニーに似る)が増殖して大きな細胞集団ができると、階層を一段降下する細胞分化(特殊な機能を持った特殊細胞化)が始まる。多細胞生物は細胞が分化し成熟特殊化・固有化して専門の器官を形成する。
[皮膚細胞は胚芽細胞→顆粒細胞→角化細胞へと変態する]
◎例えば、皮膚の細胞は、未分化で分裂能力を持つ胚芽細胞が分化度(特殊化)の高くなった顆粒細胞になり、さらに特殊化の進んだ角化細胞となる変態を経て、ついには死んでしまう。
[場が細胞に情報を与えてその特性を指定する]
◎特殊化は細胞の位置や置かれる場所(全体・文脈)が細胞(部分)に指示を与えることによって進行する。細胞の集まりが情報を出して組織を作り上げるのではなく、組織という場が細胞に情報を与えてその特性を指定する。新入社員が部署に配属されてそこの色に染まるように。
[環境が人を作る]
ボトムアップ(個人が集まって組織を作る)方式ではなくトップダウン(出来上がった組織の中に個人を集める)方式によって組織が作られる、環境が個人を作る。全体がなければ部分は存在しない。
[決定権は本人にはなく上位組織が持つ]
◎胚が未分化の時期、将来手として発達する区画にある細胞を取り出して、耳として発達する予定地に移植すると、その細胞は自分の持つ情報によって手として成長するのではなく、その場の持つ情報に従って耳として成長する。ゲーデルがいったように、決定権は個人にはなく、上位組織(文脈)が持つ。
[単細胞生物のアメーバは多細胞生物的な行動も取る]
◎(粘菌)アメーバ(タマホコリカビ)は単細胞生物だが多細胞生物的な行動も取る。食料が豊富なときには単独行動(自給自足)をするが、食糧難(環境悪化)になれば、特殊な分泌物を出してお互いに寄り集まり、多細胞生物であるかのように、特殊化・分業化を始めて、キノコのような形になる。
[個体と集団との見境はない]
◎この変化(単独行動から群体への変態)は遺伝子によって導かれる。この辺まで来ると個体と集団(群)との見境がなくなる。生物と無生物との境がないように、キノコ型アメーバ集団は一個体なのだろうか単なる群なのだろうか。
[特殊化細胞が持つ核(遺伝子)も生殖細胞と同じ全遺伝情報を保存する]
◎オタマジャクシの特殊化細胞(下位階層)中にある核を取り出して卵子(生殖細胞・上位階層)の中に移植すると発生が始まり個体を完成させる。特殊化細胞が持つ核(遺伝子)も生殖細胞と同じ全遺伝情報を保存する。
[特殊化細胞の遺伝子は大部分封印(自己限定)される]
◎特殊化細胞が持つ遺伝子は大部分が使われることなく封印されていると考えられる。が卵子(生殖細胞)の中に移植(階層上昇)されることによって、封印が解かれる。特殊が普遍化(普遍回帰・里帰り)する。衆生も仏性を持つ。