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このブクロを通じて宇宙を網羅する基本法則を提示していきたい。

第四章 多様性と統一性とをもたらす階層構造 [26]階層構造における部分と全体の関係

[26]階層構造における部分と全体の関係
[全体は部分を一つにまとめる要を持つ]
◎全体は部分を一つにまとめる要(核・芯・中心)を持つ。要は扇子の骨を一つにまとめる位置で、それを持たないものは全体とは呼べない。ユングは全体(意識+無意識)を自己(中心を持つ全体)と呼び、部分(意識とその中心)を自我と見た。
[全体の核となり得るもの]
◎例えば、オーケストラにおける指揮者(核)と楽器奏者(部分)とは全体と部分との関係にある。全体の核となり得るものに、核・目的(標語)・目標・名前(個人内を統一)・苗字(家族を一つにまとめる)・言葉・法則・力などなどがある。
[日本人は集団・全体を重視し、欧米人は個人・部分を重視する]
◎日本人は苗字(集団・全体)を重視し、欧米人は個人名(個人・部分)を重視する。ヨーロッパでは、個人名→家族名の順序で名前は並べられ、日本では、家族名→個人名の順序である。
[欧米は個人をまとめ、日本は家族の下にまとまる]
◎ヨーロッパは少し親しくなれば、個人名が使われることが多く、日本では家族同然の親しさにならないかぎり、家族名で呼ばれる、特に大人の世界では。日本ではお茶碗(家庭)にご飯(個人)を盛り、欧米ではパンとハムエッグとコーヒーで朝食(家庭)が成立する。
[確立した自我が関係を図る西洋と確立した一体感に切れ目を入れる日本]
ユング心理学河合隼雄はいう、「西洋では、最初になすべきことは、他と分離した自我を確立することです。このような自我が所を得た後に、他との関係をはかろうとします。これに対して、日本人はまず一体感を確立し、その一体感を基にしながら、他との分離や区別をはかります」と。
[西洋では自我作りから、日本人は関係作りから始まる]
◎西洋では付き合い、関係作りは正(自我)→反(他人)→合(関係作り)の弁証法的上昇(ボトムアップ的)展開をするが、日本人の場合には合(関係作り・一体感の確立)→反(他人)→正(自我)と西洋とは逆回りの下降(トップダウン的)展開である。
[よって立つ階層では全体・自律]
◎文字・音素は文字・音素の階層では独立・自律するが、一階層上の単語の階層では部分・依存である。また単語は単語の階層では全体であるが、さらに一階層上にある文(句)の階層では文句があるので部分となる。このように寄って立つ階層では全体・自律であるが、上位階層に対しては部分・依存となる。
[部分と全体は異なった階層に属す]
◎部分と全体とは階層を異にする、部分が下位で全体が上位という位置関係にある。しかしながら、「部分」とか「全体」とかは相対的で、それは自分自身では決定できず、相手との関係で決まる。最上階層(ここは絶対が支配する)以下ではすべて相対的である。
[文化は階層構造を持つ]
◎文化(行動・生活様式。例えば、言語・学問・芸術・習俗・道徳・宗教・諸制度など)も階層構造を持つ。例えば、言語(文化)は、文字・音素→単語→句→節・文→段落→章→作品→ジャンル(部門)→文芸・学芸→文化という上にゆくほどすそ野が広がる、他分野と重なりあう寄り合う逆山形の階層構造を持つ。
[ハトも概念を持つ]
◎ハトは、ネコ・樹・花・動物・魚などの概念(?)を獲得できる。ハトはマンガの主人公を見分けられるようになった後、その主人公をバラバラに切って並べ替えても認識できる。つまりハトは統合された、一つの完成されたイメージ(統合された全体)としてではなく、チップの寄せ集め図形(部分の単なる烏合の衆)として認識する。
[概念力は異なるものに共通点を見出す能力]
◎概念は、複数の物事の中に共通性を見出して、一つにくくる能力・記号である。これとあれとは同じだなと判断(分類)する能力である。これは、極端にいえばアメーバだって(失礼!)持っている、エサとエサでないものの識別能力を。識別能力は分別(分離)する分類力と統合(概念化)する結合力からなる。これは物質だって持っている。
[部分の相互関係をまとめる機能は一つ上位の全体が持つ]
◎部分も自律性(独自機能)を持つという点では全体である。例えば、心臓(部分)を身体(全体)から取り出して生理的食塩水につけると、かなり長い間同じリズムを刻みながら収縮運動を繰り返す。そういう点からすれば全体であるが、身体との関連でいえば部分である。部分(要素)間の相互関係をまとめる調和的に維持する機能は一つ上位の全体が持つ。
[単位をなすが全体の構成に関与するホロン]
◎ケストラーは「ホロン」(部分として全体の構成に関与すると同時に、それぞれが一つの全体的・自律的まとまりをもつ単位)を提唱した。例えば、生物(全体)に対する器官(部分)、器官(全体)に対する細胞(部分)、細胞(全体)に対するミトコンドリア・ゴルジ体・鞭毛・収縮胞・食胞などのオルガネラ(細胞小器官・部分)。
[全体は部分を上に超え出て、それを内に含む関係にある]
◎部分と全体、部分は個性(多様性)を追求し、全体は秩序(統一性)を要求する。全体と部分の関係は、全体が部分を上に超え出て、それを内に含む関係、お茶碗(全体)とご飯粒(部分)の関係にある。このような体系を持つシステム・組織は必ず階層構造を成す。
[全体は「完全・満足」の気持ちを、部分は「不完全・不満足」感をもたらす]
◎全体は「完全・満足・充足」の気持ちを、部分は「不完全・不満足・欠如」感をもたらす。この不完全・不満足感(欠如感)が統合へ向かわせる欲求として働く。自分を部分(不完全・不満足)と見なす気持ち(劣等感)が、より大きな完全・満足へと向かわせる成長欲・向上心の源である。
[意識・精神に存在する成長欲・向上心は物質によっては完全・満足を得られない]
◎人間の場合は成長欲・向上心は意識・精神に存在する。そのような意識・精神に根ざす成長欲・向上心が物質(肉体)的なものにしか向かわない場合は、物質によって自分を完全・満足な者にしようとする完成不可能な物質指向的欲望として働く。これが欲望の根源である。
[精神的欲望は精神的充足でしか満足を得られない]
◎欲望は完全な満足が得られない。意識・精神(上位・全体)は精神的なもの(同一階層)からしか本物の満足は得られない。物質を手に入れても精神は目的を達せず欠けたままであるから。
[最高階層に達するまで真の満足は得られない]
◎仏教に「三界」がある。(性欲・食欲[肉体的欲求]に振り回される者が住む)「欲界」→(二欲を統制したが、まだ肉体的感覚的に知覚される物質的存在の虜である者が住む)「色界」→(物質的欲望を超えたが、俗世界での精神的欲望[名誉・地位・名声]に執着する者が住む)「無色界」。仏教的には地上に向けたあらゆる意識・精神の働きさえ止めなければならない。
[最上階層に有頂天がある]
◎この三界の上位にある(無色界で働く精神機能さえ働かせない)有頂天は最上階層(無想定=何ものにも執着しない無一物の心境=非想非非想定=無念無想の境地=非想する意志すら消え去った心理状態)である。
◎物質的欲望と精神的欲望との両者、さらに自分自身(を方向づける意志)をも乗り越えたときに初めて有頂天に至る、欲しい物が手に入ったくらいでは有頂天にはなれない。
[哲学・力・能力・統率力を持たないと、全体(上位)は部分(下位)に振り回される]
◎上司が哲学・力・能力・統率力を持たないならば、全体(上位)は部分(下位)によって動かされ振り回される。部下に振り回されて、部下を使いこなせない。これは(物理・化学法則のみが支配する)物質界ではありえないことではあるが。精神に重きを置く世界では精神力がものをいう。
[より低位階層がより高位階層を支配・制御する下位機能・コンプレックス]
◎例えば、潔癖症の少年は自分の潔癖症(少年の内にあって自律的に働く下位機能・コンプレックス)に振り回される。これをさらに大きな枠「家族」の中で見ると、少年は潔癖症に振り回されるが、反面その行為によって家族を振り回す。彼は振り回されることによって振り回す。潔癖症→少年→家族→学校・病院と、より低位階層がより高位階層を支配・制御する。これを如何に正常に戻すかの方法と能力が上位者に対して問われる。
[能力が高い下位階層は上位階層を逆転制御することだってありえる]
◎上位階層は下位階層を無条件で制御するわけではない。この少年のようにコンプレックス(意識下に抑圧された強い感情やこだわり・心のしこり)に乗っ取られる下剋上も多々ある。感情に駆られるとか、衝動買いとか、ついうっかりしてとか、この口が悪いんですとかの一時的乗っ取りならば、ごく普通であるけれども。
[全人格の統一が未完成では時に部分(下位階層)が全体(上位階層)を乗っ取る]
◎この少年は全人格の統一(トーナメント形式で最上階層・前頭連合野が順次下位を統制するシステム)の完成に至っていないで、時として部分(下位階層)が全体(上位階層)を長期間乗っ取る。次に少年(部分)はそのことによって家族の核(乗っ取り犯・ガン)となる。
[過剰介入(異常接近)は相手の重力に捕らえられてしまう]
◎そうなれば、家族は少年(太陽)の回りをうろうろするだけの惑星に成り下がる。すると家族は往々にして学校・病院(上位階層)を巻き込んでゆき、学校・病院も何とかしようと頑張れば逆に家族に振り回される羽目に陥る。
◎しかしそのような家庭は、拒否されると往々にして次々に取っ替え引っ替え巻き込む(依存できる)相手を捜し求める。このようにして病院巡りをする患者が多くいる。
[病気が王様の席に着く]
◎かくて少年は潔癖症を持つことで数多くの惑星を従える太陽の位置に着く。病気・症状が彼を王様・太陽にする。実をいえば、太陽の位置に着くのは少年ではなく、さらに下位にある潔癖症ではあるが。
[上位階層が下位階層を支配・制御するのが自然な姿]
◎月は地球の周りを回るが、地球は太陽の周りを巡る。太陽系は銀河系を周回するが、銀河系自体も回転する。このように上位階層が下位階層を支配・制御するのが自然な姿である。下位階層が上位階層に従うのが基本法則である。ギリシアの哲学者ソクラテス(前470-前399)はその考え方から毒杯をあおいだ。
[地球はリンゴを引き落とすが、私はケーキに引き寄せられる]
◎地球はリンゴを引き落とすが、リンゴの上に地球が落ちることはない。とはいえ、私はしばしばケーキに引き寄せられる。ケーキの魅力には勝てません、その時一杯のコーヒーも怖いですが。
[すべては関係・影響し合う]
◎あらゆるものは互いに関係・影響し合う。この関係はどこまでその視野を広げていけばいいのだろうか。「バタフライ効果」はいう。蝶の羽ばたきのような最初の小さなぶれが離れた地点では思いがけない程の広範囲に影響を与える、小石の波紋がどんどん広がるように。原因・結果は震源地から離れれば離れるほど確定的見極めはつけられない。
[現実的要請が範囲の切り取りをする]
潔癖症の少年は、彼を全体(全影響範囲)として彼だけを対象に個人療法する場合と、少年を家族(全体)の一員(部分)として家族療法を施す場合とがある。個人・家族が属す学校・社会を対象とする社会療法(社会改革)も考えられよう。
において、動物は植物よりも上位階層に位置する。
[動物の身体は、植物が持つ機能を合わせ持つ]
◎しかしながら動物の身体においては植物性器官を持つ。それは植物が持つ機能、消化・生殖・呼吸・(心臓)循環・排出・吸収・内分泌の働きを受け持つ。不随意運動を支配する自律神経系がこの植物的機能の調節に働く。
[動物性器官は、動物の身体によく発達した機能をつかさどる]
◎それに対して、動物性器官は、運動・感覚・神経など動物の身体においてよく発達した機能をつかさどる。体性神経系(脳脊髄神経・動物性神経系・随意神経系)は、運動・感覚・記憶・学習・知覚など動物的機能を支配する。
[階層構造を成す神経系]
◎神経系もトーナメント形式の階層(重層)構造を成す。
◎神経系=中枢神経系(脳+脊髄)+末梢神経系(身体各部と中枢神経系との間を連絡)。
末梢神経系=1)体性神経系[=運動神経(遠心性)+感覚神経(求心性)]+2)自律神経系[=交感神経系+副交感神経系]。
[感覚情報はボトムアップトップダウンとで伝達される]
◎感覚器官の情報伝達神経は中枢(大脳皮質)へと伝える(ボトムアップ)方向での求心性(感覚系)神経と、筋肉・運動器官へと伝える(トップダウン)方向の遠心性(運動系)神経とがある。
[動物においては、植物性器官の上に動物性器官が位置する]
◎人間や動物においては、植物性器官の上に動物性器官が重層的に位置する。ときとして事故などが原因で発生する植物状態は、脳の重症な損傷によって思考・運動・感覚を司る大脳機能(動物性機能)が失われる継続的な意識障害である。神経反射や呼吸・循環・消化など生命維持に必要な(植物性機能を支配する)脳幹は生きている。
[植物状態は動物性機能の障害]
植物状態は、開眼したり眼球運動を示すこともあり、自発呼吸をするが、自力では動けない、食事ができない、発声機能は働いたとしても意味ある内容を発信しない、ほとんど意思の疎通がない、脳波は平たん波ではないものの意識を失って回復の見込みがほとんどない状態といえる。
[進化はすでに存在するシステムに新しいものを付加する方式で進む]
◎進化は基本的にはすでに存在するシステムに新しいもの(システム・機能)を付加する方式で進む。動物進化はすでに存在する生物の上に新しい生物(魚類→両生類→爬虫類→哺乳類)が誕生して多様化した。もちろん毛髪が抜けるが如く絶滅した種も膨大な数に上るが。