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このブクロを通じて宇宙を網羅する基本法則を提示していきたい。

第四章 多様性と統一性とをもたらす階層構造 [27]自然界での進化・成長は階層の上へ建て増す階層構造的進化

[27]自然界での進化・成長は階層の上へ建て増す階層構造的進化
[自然選択はトーナメント形式である]
◎突然変異(差異)+自然選択=分岐+勝敗=トーナメント形式である。突然変異によって対等だった仲間との間に差異(分岐)が生まれる。その差異が有利に働くか不利に作用するかで勝敗(選択)が決まる。有利となれば進化の階段を一段登る。不利に働けば消滅が待ち受ける。もちろん勝負なしの引き分けだってあるだろうが。
[進化は時間の経過とともにさまざまに変化・展開を繰り広げる]
◎「進化」は英語で"evolution(展開)"という。"evolution"は、時間の経過とともにさまざまに変化・展開を繰り広げる。種が芽を出し、幹を伸ばし枝を広げ、葉をつけ、花を咲かせ、実をつける展開である。
[宇宙は始まりから現在まで四階建ての階層として展開する]
◎宇宙をその始まりから現在までの百数十億年(170億年?)を大きく四階建ての階層(的進化)に分ける。あくまで地球を中心軸とすればであるが、1)(宇宙進化)物質進化→2)化学進化→3)生物進化・地球進化→4)社会(文化的)進化、という階層になる。
[一階部分が原子を生成する宇宙進化・物質進化]
1)一階部分が「宇宙進化」(物質進化)。それはクォーク(現在のところ元素構成要素の最小単位で6種類ある)をもとにして「元素・原子の生成」時代となる。最初に始まった宇宙進化によって原子が百個ほど生み出された。
[元素と原子は中身が同じ]
◎元素・原子は同じものを言い表すが、原子は物理学で好まれ、元素は化学のお気に入り。産業界でも新製品の規格争いがあり、ほとんどの場合最終的にどれか一つに規格が統一される、自然淘汰される。学問界ではどうなることやら。
[二階部分は元素の結合による化学進化]
2)二階部分は「化学進化」。それは一階(宇宙進化)で生成された元素(物質の最小単位)をもとにして「細胞の生成」時代となる。化学進化によって生命を構成するさまざまな物質(無機・有機化合物)が生み出され、最終的に細胞が完成した。
[化学進化は元素から新しい化学物質が生成される過程]
◎化学(分子)進化は、原始地球上において生命が誕生するまでの、宇宙に生じた元素から順次生成された化学物質(炭素・水素・酸素・窒素・メタン・アンモニアアミノ酸脂肪酸有機化合物→タンパク質・核酸・多糖類)が新しい性質や機能を獲得してゆく。
[自然は有能な化学者]
◎自然界が自力でアミノ酸・タンパク質・核酸塩基・ヌクレオチドなどを合成することは可能である。それは20世紀初頭にソ連の生化学者オパーリン(1894-1980)らによって提出(見出)された「生命の起源」理論(発見)である。
[三階部分は細胞をもとにした生物進化・地球進化]
3)三階部分は「生物進化」(と並行した地球進化)。それは二階(化学進化)で形成された細胞(生命の最小単位)をもとにして「人類の生成」の時代となる。
◎すべての生物は基礎単位である細胞から構成され、細胞が生物の構造・機能上の単位だという細胞説を、ドイツの植物学者シュライデン(1804-1881)が植物について、ドイツの動物生理学者シュワン(1810-1882)が動物について唱えた。
[地球進化は生息域の拡大]
◎生物進化と並行して進んだ地球進化は環境において今までの未開拓領域を棲息空間に作り変え、そこを多様に細分化して新しい環境を次々に創造してゆく。生物進化と地球(環境)進化とは車の両輪である。環境の創造は環境の拡大(海→「海+陸」→「海+陸+空」)である。すべての創造は(古きの上に新しきを乗せる)拡大であるが。
[四階部分は人間による社会(文化的)進化]
4)四階部分は「社会(文化的)進化」。それは三階で誕生した人間(社会の最小単位)をもとにして「文化・社会の生成」の時代となる。文化(知識の伝承・蓄積)は言葉なしにはこれほど発達・発展できなかっただろう。宇宙では情報が非常に大きな比重を占める。
[進化・成長はそれ以前を基礎構造としてその上に新しい構造を建て増す]
◎宇宙の四階建て的展開(進化)で示したように、進化・成長はそれ以前に建設したシステムを基礎構造(要素・部分・素材)としてその上に新しい(より複雑な)構造を建て増す。
[過去を踏まえない創造はない]
◎一つ上位階層は、その一つ下位階層で生成されたものをもとにして新しいものを生成(創発)し、それをさらに上位の階層に対して素材として提供する。このように下位で生成された素材(部分)を、上位がそれをもとに新しいシステム(全体)を創発する。過去を踏まえない創造はない。では最初はどうなるのだろうか。神のみが成し得るということだろうか。
[植物は無機物を取り入れる独立栄養を営む]
◎それを生物界で見てゆこう。植物は栄養として無機物を取り入れる。それを基にして光や化学エネルギーを利用して体内で必要な有機化合物を独力で合成する。自分の体をそのような有機化合物から作り上げるという独立栄養を営む。
[動物は有機物を従属栄養する]
◎それに対して草食・肉食を問わず動物は主として有機物を摂取(従属栄養)する。つまり従属栄養生物(動物・多くの細菌)は独立栄養生物(植物)をエネルギー源や身体の構成要素として取り込む。
[自然界は鉱物・植物・動物・人類という階層構造を成す]
◎そういう点で、自然界は、鉱物(無機物)→(バクテリア)→植物(有機物)→動物(草食動物→肉食動物)(→人類)という階層構造を成すとも見なせる。下位で作られた素材を上位が加工するという宇宙方式から考えれば。
[自然界も宇宙方式を踏襲する]
◎自然界は四つの階層[物質(無機物)→植物(呼吸・栄養摂取)→動物(感覚・運動能力)→人間(知識・文化)]を重ね合わせる。バクテリア(細菌)はすべての階層とリンク(連結)し複雑な円環を形成する。
[独立栄養から従属栄養への退化は専門化・特化である]
◎植物的機能をもった単細胞生物が独立栄養機能(葉緑素)を捨て去り、代りに運動能力を発達させた生物が動物の祖先になった。動物での、独立(自律)栄養から従属(依存)栄養への退化(依存化)は専門化である。分業は、すべてをこなす何でも屋ではなく、専門家志向である。動物の場合、進化は行動・移動という生活方式の特殊化へと向かう。
[機能を捨てる(退化させる)ことによって新しい機能を生み出す(進化させる)]
◎動物はタンパク質を取り込み、それをアミノ酸にまでいったん分解し、それを必要な種類のタンパク質にまで再合成する。このことによって、植物がする無機物から有機化合物への合成は不必要となり、その機能を持たなくてもすむ。その代わりそれを植物に依存する。農業を捨てて家具屋になり夕食に野菜を買う如く。
[有機化合物の合成は文生成と同じ方式]
◎これは文字を合成して単語を作り、単語を合成して文を作る言語生成方式でいえば、文字を合成して単語を作る役割を植物が担い、単語を合成して文を作る階層に動物が位置する。「この面において」という限定付きであるが、動物は植物よりも上位階層に位置する。
[動物の身体は、植物が持つ機能を合わせ持つ]
◎動物は、身体の中に植物性器官を持つ。それは、植物が持つ機能、消化・生殖・呼吸・(心臓)循環・排出・吸収・内分泌の働きを受け持つ。不随意運動を支配する自律神経系がこの植物的機能の調節に働く。
[動物性器官は、動物の身体によく発達した機能をつかさどる]
◎それに対して、動物性器官は、運動・感覚・神経など動物の身体においてよく発達した機能をつかさどる。体性神経系(脳脊髄神経・動物性神経系・随意神経系)は、運動・感覚・記憶・学習・知覚など動物的機能を支配する。
[階層構造を成す神経系]
◎神経系においても、トーナメント形式の階層(重層)構造を成す。人間の神経系を示す。
◎神経系=中枢神経系(脳+脊髄)+末梢神経系(身体各部と中枢神経系との間を連絡)。
末梢神経系=体性神経系[=運動神経(遠心性)+感覚神経(求心性)]+自律神経系[=交感神経系+副交感神経系]。
[感覚情報はボトムアップトップダウンとで伝達される]
◎感覚器官の情報伝達神経は、中枢(大脳皮質)へと伝える(ボトムアップ)方向での求心性(感覚系)神経と、筋肉・運動器官へと伝える(トップダウン)方向の遠心性(運動系)神経とがある。
[動物においては、植物性器官の上に動物性器官が位置する]
◎人間や動物においては、植物性器官の上に動物性器官が重層的に位置する。ときとして事故などが原因で発生する「植物状態」は、脳の重症な損傷によって思考・運動・感覚を司る大脳機能(動物性機能)が失われる継続的な意識障害である。神経反射や呼吸・循環・消化など生命維持に必要な(植物性機能を支配する)脳幹は生きている。
[植物状態は動物性機能の障害]
植物状態は、開眼したり眼球運動を示すこともあり、自発呼吸をするが、自力では動けない、食事ができない、発声機能は働いたとしても意味ある内容を発信しない、ほとんど意思の疎通がない、脳波は平たん波ではないものの意識を失って回復の見込みがほとんどない状態といえる。
[進化はすでに存在するシステムに新しいものを付加する方式で進む]
◎進化は、今まで見てきたように、基本的にはすでに存在するシステムに新しいもの(システム・機能)を付加する方式で進む。動物進化は、すでに存在する生物の上に新しい生物(魚類→両生類→爬虫類→哺乳類)が誕生して多様化してきた。もちろん、毛髪が抜けるが如く絶滅した種も膨大な数に上るが。