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第四章 多様性と統一性とをもたらす階層構造 [29]徐々に建て増される感覚面・運動面の階層的構成

[29]徐々に建て増される感覚面・運動面の階層的構成
[感覚野は三層構造を成す]
◎感覚野は上へ積み上がるわけではないが、三層(領域)構造[一次感覚野+二次感覚野+三次感覚連合野]を成す。一次野よりも二次野、二次野よりも三次野が上位(高次)の階層に属す。三次野は進化の階段を上るほどに増大する。
[感覚情報は低次領野から高次領野を経て再構成・統合され知覚を形成する]
◎一次・二次野は同一分野内の感覚情報だけを扱う。一次感覚野は、情報を細かく分析分解しバラバラにする。それを受け取る二次感覚野は、そのバラバラ情報を、人の顔、動物とか、人の声、メロディーなどの具体的な形にまとめ組織化する。
[私たちは再構成された形・音声などを知覚する]
◎例えば、第二体性感覚野には身体再現地図があり、個々の情報をまとまった具体的な形に形成する。感覚情報は低次の領野(細かく分析・特殊化・分業化)から高次の領野において逐次的に再構成・統合されて知覚・認知を形成する。
[多重感覚的三次野が個体発生的に最も遅く発達する]
◎三次野が個体発生的にも(系統発生的にも)最も遅く発達する。三次感覚野(感覚連合野)は、多重感覚的で、頭頂葉(触覚担当)・後頭葉(視覚担当)・側頭葉(聴覚担当)が互いに接する部位にあり、視覚・聴覚・触覚情報を同時的空間的情報へと大統合する。
[感覚情報はボトムアップして最上階層(前頭連合野)に至る]
◎人体内の情報の流れを示す。(感覚)情報はボトムアップして最上階層(前頭連合野)に至り、そこから指令がトップダウンして筋肉に下降する。反射の場合にはそうではないが。
[運動指令は上位から下位へ指令が下る]
◎感覚情報の入力・受容→視床→一次感覚野→感覚連合野(認知)→前頭連合野(判断・決定→運動計画・準備)→前補足運動野(創作)→補足運動野(複合・複雑・高位運動とプログラム)→運動前野(一連の動作)→第一次運動野(単位・単純・低位運動)→視床・脳幹・大脳基底核・小脳による単純な基本的自動的定型的運動→脊髄神経回路網(反射運動)→運動神経→運動細胞→筋肉(運動実行)。
◎このように随意運動(意識的運動)から不随意運動(無意識)へと上位階層から下位階層へと指令が流れてゆく。
[小脳はフィードバック情報の誘導によって運動を調整して自動化する]
◎運動中枢である小脳は感覚器官から送られて来る外部情報(フィードバック情報)によって運動(ピアノ演奏・自動車の運転など)を調整して自動運動へつなぐ。感覚情報がなければぎこちない協調性のない運動となる。このように、小脳は運動が円滑に正確に行われるよう高度の制御統制する。
[一次運動野は身体部位を動かす情報を送り出す]
◎一次運動野は脳からの運動発信の中心的基礎的役割を果たす。動作に必要な複数の筋の「活動と抑制」のパターンを発信して個々の身体局部部位(小指・舌・手首・唇など)を動かす情報を送り出すが、出現する運動は身体の特定部分(小範囲)に限定される。部位的特異性・限定性があり、体の小部分を支配する。指・顔・口は運動野内に広い部位を占めるが、背中・腹・腰などの胴体部分の支配領域は狭い。
[運動前野は一連の流れるような動作を一括して連結する]
◎運動前野(二次運動野・前運動野)は、部位限定的な一次運動野に比べて、一連の流れるような動作を一括して連結する場所で、運動の直前・準備状態で活動する。複雑な運動プランに基づく運動の制御を行う。
[個々の筋肉運動を連続的動作へと協調させる]
◎運動前野は頭頂野・前頭葉・側頭葉の連合野視床からの感覚情報を頼りにして誘導される連続的動作を指揮する。一次運動野による個々の筋肉運動を、目的にかなったようにスムーズに働かせるために運動の統合と協調をつかさどる。例えば、発声は、口・舌・あご・唇がうまくまとまって動き、それらの個々の部分が協応することによって可能となる。
[補足運動野は記憶情報の導きで連続的動作を行う]
◎何をするかを頭の中で思い浮かべるだけで、補足運動野が活動する。連続的動作の順序の情報を持つので、記憶情報に頼ったすでに学習済みの連続的動作を行う場合に活発に活動する。それ故に補足運動野が傷害されると、例えば意志通りに右手と左手とが協調して動かすことが困難になり、無意識的に(意志とは無関係に)動いてしまう。
[前補足運動野は未習得の運動を獲得する]
◎補足運動野がすでに学習済みの運動に関与するのに対して、新しい運動、学習初期の慣れない運動、難しい運動、運動企画の変更時、新しい運動順序の学習時では前補足運動野が活動する。
[複雑な行動を実行するには脳の広範囲の活性化が必要である]
◎腕・手・指などの流れるような緻密な作業を必要とする楽器演奏(例えばピアノ)の場合、今必要な情報を取り出し、その場で保持し、運動プログラムに変換する。その後に必要な旋律を記憶から引き出し、次の運動プログラムを検索する。このような複雑な行動をするためには脳の広範囲に渡る同時的活性化が必要である。そしてそれらを取り仕切る司令塔も。
[新生児は協調がうまく働かず、手足がバラバラでまとまらない]
◎精巧な個々の動きとそれらが高度に統合された専門家のなめらかな動作に対して、新生児は協調(相互抑制)がうまく働かず、手足が独立バラバラで統一せずまとまらない。あたかも単語がいまだ文にまでまとまらない低い言語能力のように。しかしそれらも経験を積み重ねてゆくことによって、統合能力(階層)がどんどん高くなってゆく。
[新生児は低階層にある反射・生得的行動が主導権を取る]
◎新生児は反射・複合運動・生得的行動が主導権を取る。自動性・反復性のある反射(歩く・走る・泳ぐ・呼吸する)や眼球運動中枢は脊髄・脳幹にある。さらに複雑な生得的行動、ものを食べる、水を飲む行動の中枢は視床下部にある。複雑度が増す機能は上位階層が受け持つ。
[歩行中枢はさまざまな機能を追加する階層構造を成す]
◎歩行中枢は、脊髄→脳幹→視床下部大脳基底核大脳新皮質と階層構造を成す。人では上位中枢神経からの指令によって、歩行運動が開始される。猫では脳幹から指令を受けると、脊髄にある自動制御の歩行運動作動回路によって行われ、歩行リズムを作り出す。
[脊髄は基本リズム運動を制御する指令を発信する]
◎歩くとき、脊髄は刺激に応じて単純な手・足の伸展・屈伸を制御する基本リズムを、屈筋と伸筋とを働かせる運動細胞に送信する神経回路網を持つ。左右の足を正しく交互に歩ませる活動リズムを作り出す神経回路網も脊髄に存在する。
[上位中枢へと上昇するにつれて次々に新しい動作を付加する]
◎脊髄段階にそれより上位にある小脳脳幹水準が加わると、途中で歩幅を変更する、速度を加減する制御も行われる。大脳基底核(スイッチの役目)は意識的に動かし始めるが、その後は無意識的に体を動かす(自動・自律)運動へと引き渡す、意志(大脳新皮質)を直接自動慣性運動へとつなぐ電話交換手である。
[自律的歩行も意志による制御が加わる]
◎歩行は意志によって随意的に開始や停止できるが、いったん歩き始めると、同じ動作が繰り返されるリズミカルな運動で、自動的に続行され、特に意識・意志しなくても歩き続けられる自律性を持つ。
[上位機能が参加すれば手を振る、あいさつするの運動も加わる]
◎さらに上位の機能(大脳新皮質)が付け加われば、さよならやおいでおいでなど複雑な動きと意味を含む情報も添付できる。言語を担当する大脳新皮質領域が加わると、話す議論する頭脳プレーも添えられる。回転寿司屋で皿を積み上げるように。
[脳幹は自動的に視線や注意を向ける反射行動を発現させる]
◎別な例を取り上げる。脳幹は、触覚と運動情報が脊髄から上がって来る、視覚と聴覚が最初に統合される、複雑な行動制御の最初の階層である。例えば、脳幹は刺激の方向に自動的に視線や注意を向け、頭を回す。物体が急に視野に現れると、そこへ視線を移すように急速な眼球運動を生じさせる。
[歩行中にも自動的眼球運動が生じる]
◎その自動的眼球運動の実行は上丘(中脳にある)が中心的役割を果たす。網膜上の視覚情報→上丘→脳幹の眼球運動中枢によって急速な眼球運動が発現する。このおかげで歩いているとき、不意に自転車が前に現れても反射的に横によける。
[脳幹による反射行動の発現を抑制するより上位階層の大脳基底核]
◎逆に見たいものだけを見てじっと視線を固定し、視覚情報を的確にとらえるためには、上丘・脳幹眼球運動中枢が勝手に動き出してしまわないように抑制をかけなければならない。
[大脳基底核は状況に合わせた運動の発現・抑止を指令する]
◎例えば運転中、目の前に現れたものすべてに目を留めてはいられない。その抑制をしてくれるのが大脳基底核(さらに上位には大脳新皮質がある)で、自分の状態と自分を取り巻く外部状況についての情報を受け取り、その状況に適した運動の発現を促進し、ふさわしくない運動を抑止する。