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このブクロを通じて宇宙を網羅する基本法則を提示していきたい。

第四章 多様性と統一性とをもたらす階層構造 [30]子どもの発達方向と方法も情報の統合化と階層の重層化

[30]子どもの発達方向と方法も情報の統合化と階層の重層化
[子どもたちは知識体系に外部情報を吸収・結合させたり知識体系を調節・変更する]
◎スイスの心理学者ピアジェ(1896-1980)は自分の子どもたちを詳細に観察記録して、その資料をもとに子どもの系統的発達を提示した。
◎個人(内部世界)と環境(外部世界)との間に不均衡(不一致)が起こると、均衡の回復をはかる。個人の知識体系に外部情報を同化(吸収・結合)させたり、知識体系の方を調節・変更させる。すんなり取り入れられるものは同化し、知識体系をいじらなければ納まりきらないものは調節する。そのことで知識体系をよりいっそう増大させて、まとまりのある方向へと発展させてゆく。
[情報は食べ物と同じである]
◎これは正(現状)→反(問題発生・挫折)→合(調節と同化)の弁証法的展開であり、個人と環境との拮抗作用であり、傾いた船の復元作用であり、情報を取り込む行動である、情報を食べ物と置き換えると食事と同じである。
[赤ん坊の行動は、脳内プログラムによって系統発生的順序に従って発現する]
◎赤ん坊の行動(反射)は、組み込まれた脳内プログラムによって系統発生的順序に従って発現してゆくが、発達速度(個体発生)は個人差がある。精神的発達は(人的・物的・文化的)環境との相互作用、外部情報を知識体系内に取り込む(同化・調節する)ことによって作り出される。身体的成長が食べ物の摂取によってなされるように。
[誕生後すぐには、刺激に対して本能的・生得的・遺伝的反射行動で応じる]
◎赤ん坊は誕生後すぐには、刺激に対して本能的・生得的・遺伝的反射行動で応じる。味覚顔面反射でいえば、新生児は甘みを与えると微笑み、苦みを与えると嫌悪感を示し、酸味では口をすぼめる。
[赤ん坊の反射はほ乳類から引き継いでいる]
◎この反射を取り仕切るのは脳幹である。この反射行動は哺乳類に広く見受けられる。これは感覚情報(甘み・苦み・酸味)から身体的感情(微笑み・嫌悪感・口すぼめ)への転換・解釈・読み替えであろう。それらは年齢を重ねるにつれて、言語的表現「甘い、苦い、酸っぱい」になる。
[その後は体制化・組織化した運動を多様に結合させる]
◎単独的反射運動が、次の段階ではある反射行動と他の反射行動とを統一化・体制化・組織化・構造化・システム化させる。さらなる段階は既に形成された体制化・組織化した運動を多様に結合させるために、さまざまな新しい体験の中で試しながら内部に存在するバグ(結合誤り)を取り除いて、より完成度の高いものに仕上げてゆく。
[反射行動を基礎にて複数の行動を組み合わせより高次の行動へと練り上げる]
◎運動の発達は持って生まれた生得的反射行動を基礎として、複数の行動単位を組み合わせることでより複雑なより高次の行動へと練り上げてゆく、一つ上位の全体的有機的行動として統一され組織化される、言葉の学習のように。アルゴリズム・プログラム(基本的操作を、指示の順を追って実行すれば、計算や問題を解決するように、組み立ててある手順書)のように。
[脳は発達レベルにふさわしい学習内容・情報だけを取り込む]
◎脳の発達はトーナメント形式に従って段階的に行われ、その発達階層にふさわしい学習内容・情報だけを取り込む。初期段階は単純な情報しか取り込まれないが、階層が上がるほどに複雑な内容をも取り込める。
[注目(中心化)は一側面にだけ注意を向ける]
◎初めの段階では事物の一つの側面にだけ注意を向けて他の面を無視する中心化(焦点化)をする。例えば、水を形が違う他の容器に(例えば三角フラスコから筒状フラスコへ)移し替えると、幼い子どもは水面の高さが変化したことだけに注目(中心化)して水の量が変化したと判断する。
[注目(中心化)から脱中心化(脱焦点化)を経て情報を総合する]
◎脱中心化(脱焦点化)は、さまざまな側面に注意を配分して(何回も中心化と脱中心化とを繰り返して)それらの情報を総合した上で判断する。それによって自分の立場だけでなく他人の立場も考慮することが可能となる。これは弁証法的展開、1)注目(中心化)→2)(挫折→)脱中心化(脱焦点化)→3)情報の統合、である。

ピアジェ理論からみた思考の発達と心の教育

ピアジェ理論からみた思考の発達と心の教育

  • 作者:滝沢武久
  • 幼年教育出版(発行 社団法人日本幼年教育会)
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