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このブクロを通じて宇宙を網羅する基本法則を提示していきたい。

第五章 矛盾しながらも統一する矛盾的自己同一 [35]最高階層の絶対(自律)と、落差・不一致・差異を生み出す相対(依存)

[35]最高階層の絶対(自律)と、落差・不一致・差異を生み出す相対(依存)
[差異の発生が解消(安定化・恒常性)への欲求を生み出す]
◎不一致・落差・変化・差異・均衡の破れ・ずれは不安・緊張を生み、注意を引きつけ、意識(感情)を呼び覚ます。自分と相手との間に落差を感じると、羨ましい、妬ましいの感情が生まれ、差異を埋めたい(解消=安定化・恒常性への回帰)との欲求が芽吹く。相手より自分の方が上だとの優越感の場合は別だが、落差が欲求を生む。
[泣く・笑うの感情表現は緊張の開放である]
◎笑いは誕生後に学習するのではなく、生まれつき備わった機能である。赤ん坊にイナイイナイバーをしてやると、けらけら笑う。何回しても飽きることなく期待する。イナイイナイ(=分離=不安・緊張=筋肉のこわばり)から、バー(=再結合=緊張解消=筋肉弛緩=笑い)へと転換する。
◎赤ん坊と同様に、大人の男も緊張をほぐしにバーに行くらしいが。そこではミルクではなく酒が出される。酒は大人のミルクなのか。人間では泣く・笑うの感情表現は生まれつきのもので、緊張の開放である。
[差・不安・緊張の解消や合点が笑いを引き出す]
◎差・不安・緊張の解消が笑いを生む。提示された、常識ではくっつかない遠く離れる二つの事柄(突然の驚き)をつなげる(一致・合致による差異の解消という)新しい発見・考えは笑いをもたらす。
[謎(緊張)解き(解消)が笑いをもたらす]
◎「何々とかけて何々と解く、その心は」という寄席での遊びがある。「豚の尻尾」とかけて「時にタカを生む」と解く、その心は「トンビだから」。
[落語は落ちで締めくくる]
◎落語は最後を「落ち」で笑わせて締めくくる。その落ちの中に「考え落ち」がある。観客に「はて」としばらく考えさせて、「あっ、そうか」と合点(一致・合致)がいって笑いが出る。
[笑顔は不安・緊張がないという意思表示]
チンパンジーは親愛の気持ちを表現するのに唇を広げ歯をむき出す笑いに似た表情を作る。笑顔を見せるのは、相手に対して「自分は不安・緊張をもたらすつもりはない」、「私たちは互いに不安・緊張をもたらす関係にはない」との意思表示である。
◎動物行動学者ファン・フーフは、微笑み(服従・防衛、競争心の放棄や親愛)は劣位(下位)の(沈黙して唇を引き歯をむき出す)表情から、笑いは逆に威嚇(上位)の表情から由来するという。
[笑顔は「和を尊ぶ」無意識の現れ]
◎日本人のニヤニヤ笑顔は欧米人に気味悪がられるが、彼らは競争・対決が基本だから緊張が当然なのだろう。ニヤニヤ笑顔は日本人の「和を尊ぶ」無意識の現れで、卑下する必要は毛頭ない、私に毛頭ないが。とはいえ、厄介なことに、ニヤニヤ笑顔は強い者に対するこびへつらい・ご機嫌取り・おべっかとしても用いられる。日本人の笑みはどちらだろう。
[落差の発生で喜び(笑い)や悲しみ(泣き)が生まれる]
◎落差が生まれたときに喜び(笑い)や悲しみ(泣き)が生じる。自分が引き上げられると喜びが、自分が引きずり降ろされると悲しみが。だれかがバナナの皮で滑ると笑いが、期待した合格ができずにすべると悲しみが。
[喜び(笑い)と悲しみ(泣き)はシーソーに乗る]
◎他人がバナナの皮で滑っても自分が直接引き上げられるわけではないが、相手が滑り落ちるので、シーソーのように、その反動で自分の方が引き上げられる。また合格・当選(引き上げ)の期待があればこそ、不合格・落選(引き下げ)の悲哀がある。
[サルも期待を抱く]
◎動物園のサルにエサをやろうと手を出すと、相手のサルも喜び勇んで手を出す。その時にエサをやらずに自分の口に放り込むと、そのサルはキーキー泣き叫んで猛烈に怒り狂う。サルも期待(未来での喜び)を持つ。無念無想になるサルもいて欲しいものだが。
[比較・対立・相対は二つのものが関係を持ち合って成立する]
◎比較・対立・相対は二つのものがなければ成り立たない、しかも互いに他と関係を持ち合って成立・存在・依存する。それに対して、絶対は他のものを必要としない、完全自律である。
[相対するものに落差が生じると意識が立ち上がる]
◎あるものを確定する・定義するには、別のものが必要である。自分を証明してくれるのは他のもの(免許証・健康保険証など)である。意識が立ち上がるのは、相対する二つのものに落差・不一致が生まれたときに、一つのものが二つに分別されたときである。
[私たちは最高階層の絶対より下にある相対の世界に生きる]
◎私たちは相対の世界に生きる。「おいしい」といえるのは、過去に食べた物との比較からである。比較なしにはそういう判断は出て来ない。この冷えたサンマはおいしくないというのは、目黒で食べた熱々のサンマとの比較の結果である。それは料理の基本である。
[時間と空間を持つ世界では絶対は存在できない]
ニュートンは1687年に「自然哲学の数学的原理」で「絶対時間・絶対空間」を提示した。ドイツ生まれの理論物理学アインシュタイン(1879-1955)が1916年に「一般相対性理論」を発表してそれらを否定するまで事実として受け入れられた。アインシュタインによれば、宇宙には絶対的な位置・時間は存在せず、時間と空間を持つ世界では絶対(自律)は存在できない。ただ相対的に位置や時間は決定される。自分を決定するのは他者・他物である。
[自我は自分を基準点にする相対世界に住む]
◎相対世界は何かを基準にして決定を下し、その何かはつねに変更可能である。時間と空間を持つ相対世界に住む自我は自分を基準点にする。極端にいえば、世界中の人々は一人一人異なった基準を持つ。世界平和は自我を越えた世界基準を分かち持つことによってのみ得られる。