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第六章 変化へ開く受容・開放と現状維持の対決・閉鎖  [41]進化停止の現状維持(閉鎖)と進化へ向かう現状変更(開放)

第六章 変化へ開く受容・開放と現状維持の対決・閉鎖
[41]進化停止の現状維持(閉鎖)と進化へ向かう現状変更(開放)
[生物は次第に環境への適応に向かって進化するとダーウィンはいう]
◎イギリスの博物学者、進化論提唱者ダーウィン(1809-1882)は、環境に最もよく適応したものが選択されて生き残る、その結果生物は次第に環境への適応に向かって進化する自然選択説を提唱する。
[現状満足者は現状が変更されないように拮抗作用(復元力)を働かせる]
◎適応は、生物がさまざまな欲求の満足を環境から得られ、環境からの要請・期待にも応じられる。内的・外的現状が満足を与えるので、現状が変更されないように、拮抗作用(復元力)が働く。上に開いた二次曲線の底辺にある玉のように左右に動いても必ず真ん中の底点に戻る。
[突然変異を捨てて、現状破壊者を排除して現状適応維持する]
◎それを裏から見ると、環境に適応する者ほど、どのような突然変異が発生してもそれは生存に不利な条件となる。ある環境への適応組はできるだけ突然変異を起こさないものが残留(現状維持)できる、これが固定化、進化の停止だろう。よく適応した者・集団・組織は身内の突然変異(解決困難な問題)を捨て、現状破壊する者を排除することによって適応維持する。適応の鎖に縛られてしまう。
[環境変化や新たな環境の産出は不適応組から進化を生み出す]
◎それに対して、不適応組はできるだけたくさん、大きな突然変異を起こした者が別の環境での勝ち組となる可能性は高くなる。そのようにして環境変化や新たな環境の産出が不適応組の中から新しい進化を生み出す。新しいぶどう酒は新しい革袋に収まる。
[古い殻を打ち破る新しい方式を生み出す不適応者が適応を勝ち取る]
◎不適応者は突然変異を生かすことによって新しい適応を勝ち取る。勝利は現状を打破する、古い殻を打ち破る新しい方式を生み出せるかどうかにかかる。得点(突然変異)を多く勝ち取ることによってさらに上位に登る、勝利の階段を登る。
[アコヤ貝は体内に入った異物(小石)を分泌物でくるんで真珠に変える]
真珠貝(アコヤ貝)は体内に入った異物(小石)を分泌物でくるんで真珠に変えて無害化する。異物(不快なもの・解決困難な問題・突然変異)を真珠(新たな価値・進化)に変えることで成長が保障される。実際にはアコヤ貝にとって真珠は何の価値(マイナスをゼロにする価値だけであろう)もない、逆に人間にひっつかまる原因となるが。
[苦情から新製品・改良品を作り出す]
◎異物をただ捨てるのはもったいない、捨てるのは現状維持である。とはいえ、現状変更は異物を真珠に生まれ変わらせる力量が問われる。最近ではそれが見直されてきて、消費者相談室(苦情処理係)に寄せられる事案から新製品・改良品を作り出す発想も出ている。苦情は変革への少々手痛い叱咤激励である。
[権力への意志・優越への欲求は劣等感をバネに優秀な能力にまで高める働き]
オーストリア精神分析学者アドラー(1870-1937)は、劣等感をバネに優秀な能力にまで高める働き、劣等性から来る劣等感を補償する機能、貝に入った砂粒(劣等)を真珠(優越)に変える内発力、を「権力への意志」「優越への欲求」「完全性への欲求」という。
[内発力が充足できない状況が劣等感を生む]
◎そのような内発力が満たされない状況が劣等感を生み、やがて欲求として育つという。苦難は人を強くする。もちろんそれによってつぶれる人も多いが。かわいい子には旅をさせよ。今の親であれば、背後に警備員を張り付かせるだろうが。
[動物は習慣を打破できないから変化・進歩しない、現状維持である]
◎動物は習慣(現状肯定)を打破できない。だから行動面で変化・進歩しない、現状維持である。習慣=本能=型といえる。習慣の打破は、習慣自身の(不随意の)自己(自律的)制御を、自我(意志)による他者制御(随意)に切り換える、自動の手動化(停止+代替え方法)である。子ども(だけとは限らないが)や動物の訓練はこの方式によって可能となる。
[無意識の自覚(意識化)はそれが引き出される状況に身を置くことで得られる]
◎悪い習慣(成長阻害する悪癖)を改めるには、悪い習慣をあぶり出す、まさにそれが引き出される状況に身を置き、その状況の中でそれが自動的に働き出すのを冷静な意志の力で押しとどめて見据えなければならない。
[瞑想によって過去の体験がよみがえる]
◎虎穴に入った者だけが虎児を得る。それによって無意識的悪い習慣への自覚(意識化)が生まれる。制止用押しボタンを手に入れる。それが瞑想によって手に入る。自分から抜け出して自分を見下ろす目(自覚)を必要とする。
[敵は味方であり、味方は敵]
◎敵は味方であり、味方は敵である。行動を自動的にしてくれる強い味方(習慣)はそれを改めたいときには手強い敵となる。薬も毒も現状を打破するときに使う。薬=毒である。「毒変じて薬となる」。「毒薬」という言葉すらある。善くなると思えば薬であり、悪くすると思えば毒である。どっちに転ぶか(結果)で名前が反転する、自分中心的自我の得意技である。
[自分の痛い欠点を指摘する憎い敵は、自分に向上の機会をくれる]
◎自分の知らない気づかない悪い癖をちくりと突き刺す憎い敵は、自分に向上の機会をくれるありがたい味方である。知っているくせに教えてくれない心暖かい味方は見方によれば冷たい敵である。
[寝た子(現状維持者)を起こすソクラテス]
ソクラテスは、自分とアテネとの関係を、アブと馬との関係にたとえる。馬にとってアブはうるさいし刺されると痛い存在である。ソクラテスアテネにとってアブ(敵)になることで味方になろうとした。薬も毒も体にとっては異物であり排除したいので、そこに注意が向き、身体は活動(免疫反応)を起こす、活性化する、真珠貝のように。ソクラテスはかなり「寝た子を起こす」目的を達したのだろう、告発を受け処刑されたところを見れば。
[天才は現状の大変革者]
ソクラテスには誠に失礼な表現だろうが、彼はキリストの予行演習かなとも思える。ソクラテスアテネ=街頭での対話=告発による毒死=弟子プラトン=著作なし。キリスト=エルサレム=街頭での布教=告発による刑死=使徒パウロ=著作なし。ソクラテスもイエスアテネユダヤを大きく変更させようともくろむ。すべての天才のもくろみは意識しようがしまいが現状の大変革である。天才度はどれほど現状を変更させる起爆剤となったかで測られるべきだろう。
[環境を変革するか、自己を変革するか]
◎天才は環境(どでかい相手)を大きく変革する力量を持つ。地球にとっての最大天才は、ラン藻類であろう。そのように環境を自分にとって有利に自在に変化させられない者にとっては、環境(の変化)にうまく対処して生き残るためには自分を自在に変容させなければならない。敵を知り己を知らば百戦危うしからず。
[弁証法は対立・矛盾を止揚して高次なものへ発展する]
弁証法的に見ると、有限なもの(神以外のすべて)はそれ自身のうちに顕在化していないとしても対立・矛盾する二面(矛盾的自己同一)を持つ。両者の均衡が取れている間は(対立・矛盾が)表面化しないけれども、いったん均衡が破れると現れ出る。その出現した対立・矛盾を止揚(階層上昇)することで高次なものへ発展する。所が、向上・成長の前には必ず均衡が破れる挫折をくぐらなければならない。
[弁証法的展開は完全大統合への回復希求力から生まれる]
◎この弁証法的展開を続けてゆくと、トーナメント形式の階段を昇って最終的には最高階層・究極へと至る。つまり弁証法は、究極(天国)へと至る方法論である。ヘーゲルはこの運動は全体性の回復希求(分離・分化した部分を再度完全大統合する力・統一力)から生じると考える。投げ下ろしたヨーヨーが自力で返って来るように。
[変化した新しい環境に適応できるように自分を作り替えて進化を果たす]
◎均衡を拮抗作用による環境適応・現状維持と読み替える。拮抗作用だけでは環境適応できないほどの環境変化があれば、現状維持を突き崩す悪しき突然変異を遺伝子に組み込む(止揚する)ことによって、変化した新しい環境に適応できるように自分を作り替えて高次の段階に進化を果たす。そのようにして敵は味方になる。現状維持を保障・指向する遺伝子と、現状変更を企てる突然変異という対立・矛盾を生物は抱え持つ。
[対立・矛盾から来る苦しみが変化への原動力]
◎だれでも対立・矛盾に出会うと苦しむ。しかしこの苦しみが実は変化への原動力となる。この原動力を生かして進化・成長・発展するか、それを捨て去って現状維持するか。実際には多くの者が苦しみをもたらすものをたたき壊すことで苦しみから逃亡する。かくて現状維持が連綿と、真っ直ぐに延々と続く砂漠に引かれた道路のように、続く。
[苦から逃げても苦は追いかけ続けると仏教はいう]
◎しかしながら、現状維持(終わりなき輪廻の環をリスのようにただあがき回る行為)も仏教は苦だとする。対立・矛盾(分岐点・均衡の破れ)から来る苦を避けて、現状維持(執着、ここが終着点ではありません)から来る苦を甘んじて受けるか。苦から逃げても苦は追つて来る。断ち切る唯一の方法は向き合う対決である。
[ラマルクも進化論を提唱した]
◎フランスの博物学者、進化論提唱者ラマルク(1744-1829)は、生物は「用不用」によって進化(環境との積極的主体的関わりによる進化)するとみた。つまり、頻繁に使用する器官は子孫を経るに従ってますます強大発達し、逆に使用しない器官は徐々に弱小萎縮退化してやがては消失していくと。
[彼は内在的発達力を進化の動因と見た]
◎また、彼は自然界には発達する力が内在すると考えた。宇宙の内在的発達力によって無機物から自然発生的に単純な生物が生じ、前進的発達傾向によって徐々に複雑な生物へと進化してきたと。
[ラマルクはいう、環境変化が動物や植物を変化させると]
◎彼はいう。「生存する種が居住場所の変更を強いられると、その動物や植物が、どれほど多様な棲息域や、場所や、気候や、手に入る食べ物や、周囲の媒体などを甘受せねばならなかったか、想像することができる。これらの変化が、きわめて穏やかに生じたとしても、さまざまの原因による必要から、現実は、その変化に影響された種の生活様式と棲息作用を、ゆっくりと変化させる」と。
[居住場所(環境)の変更は大きな進化をもたらした]
◎居住場所の最大の変更、つまり陸上に最初に上がったのは植物で、次に昆虫が、その後に魚類から進化した両生類などの脊椎動物である。ラマルクの想定した進化の根拠(用不用)は科学的には間違っているかも知れないが、表現した内容は大筋で合っているのではないだろうか。