宇宙原理があなたの中を貫流する

このブクロを通じて宇宙を網羅する基本法則を提示していきたい。

第十章 下降で増しゆく分解力と上昇で加速する統一力 [72]自己組織化、エンテレケイア、霊魂、生命力、統一力、気

[72]自己組織化、エンテレケイア、霊魂、生命力、統一力、気
[合理主義哲学と非合理主義哲学]
◎機械論・合理主義・主知主義(人間の本質を知性・理性として、合理性を主張する哲学)に対抗する生の哲学は、知性では捉えられない非合理的・根源的・多元的・有機的・具体的・流動的・創造的生命の流れを、直観・体験を媒介として全体的直接的把握しようとする。
[未合理→合理→超合理と階層構造を成す]
◎未合理(混沌)→合理(現実・俗)→超合理(空・無・聖)と階層構造を成すから、合理(合理主義・主知主義)から超合理(直観把握)への飛躍、合理の後に超合理(生の哲学)が続くのは自然な流れである。
[生の哲学は部分を統合してまとめる生命を把握しようとする]
◎「生の哲学」がとらえようとする生命は、部分(要素)を統合して全体へとまとめ上げる生命力、構造化・組織化能力などとさまざまに表現される。
[病気は動物磁気の不均衡・片寄り・滞りによって生ずる]
1)オーストリアの医学者メスメル(1734-1815)は、人体は宇宙に充満するガス状動物磁気に支配されると見た。病気は、潮の満ち引きのように収縮と膨張を繰り返すリズムを持つ動物磁気が体内で滞る不均衡・片寄り・停滞によって生ずるという。それ故、病気は不均衡・片寄りを解消することによって治ると考えた。これはある程度の正解を得ていると思える。中国の気と似た考え方である。
[気は生命の原動力で階層を成す]
2)「気」は、「き」・「け」・「げ」と三通りに読む。「け」・「げ」は様子・気配・気持ち(外から見える雰囲気)を示し、「大人げない」などと使う。中国で「き」は、メスメルと同じ意味「生命の原動力」(内に秘める力)で使う。気には階層があり、精妙な気を「精」・「神」と呼ぶ。プロティノスも霊魂より上位に精神を置いた。
[気は離合集散する]
荘子は、「人の生るるとは気の聚るなり。聚れば即ち生を為し、散ずれば即ち死を為す」、という。
◎人生は気の離合集散である。気が散るだけで死ぬのは怖いが。
[生命力は目的へと完成・完全へと向かい全体化する非物質的な力・原理]
3)「エンテレケイア(エンテレキー)」はアリストテレスの用語である。それは生命力で、目的へと完成・完全へと向かい全体化する非物質的な力・原理を表す。当のアリストテレスは人間はポリス(都市国家)的動物であるという。ポリスは都市が一つの国のように自給自足・自律する共同体である。そうなればチンパンジー・ゴリラもポリス的動物である。
[人間は世界を統合する方向へと進む世界国家的存在]
◎人間はポリス的動物にとどまらず、世界を統合する方向へと進む世界国家的動物である。世界は統合へと徐々に進んでいる(先頭を切っているのはインターネットで、世界を網にかけるかも)とはいえ、自立心が芽生えたばかりの若い国々もあり、すでに老成した国家もあり、国によって成熟度に大きな隔たりがある。世界が統合されるまでにはまだまだ乗り越えねばならないハードルがいくつも待ちかまえているだろう。
[宗教は強力な結束力を持つ代わりに強い排他性も合わせ持つ]
◎特定の神を頂点にいただく宗教は結束力・求心力が強い代わりに、排他性もすごいものがある。宗教は世界統合をはばむ巨大ハードルの一つである。今や(米ソによる)政治思想の対立から宗教思想の対立の時代に突入している。
[魂は天と善を望んで上昇しようとするが肉体が地上の方へ引き下ろす]
4)ソクラテスはいう、「魂は天と善を望んで上昇しようとする」が「肉体が地上の方へ引き下ろす」と。
◎魂は上昇欲求を持つ。蝶は空を舞うが、その幼虫(毛虫)は地をはい回る。「鶴の恩返し」・「羽衣物語」・「竹取物語」はその魂の上昇欲求をテーマとする。
[生存を維持し、より強くより大きくなろうとする根源的な生命衝動・欲求]
5)ニーチェは、「力への意志」を、生存を維持し、現在よりもより強くより大きくなろうとする根源的な生命衝動・欲求と見る。
◎「実際のところ既に十三歳という少年の時に、悪の起源の問題が私につきまとった」とニーチェはいう。
◎禅の公案のように人生最大の課題だったのだろう。解答を求めての人生上の旅の目的地「力への意志」にやっとたどり着いた。悪の起源を根源的な生命衝動の中に見出した。波瀾万丈の人生でしたね。
[宇宙には混沌から複雑な構造が自律的に形成されてゆく自己組織化能力がある]
6)科学用語「自己組織化」は、分子を結合し、物質を組織して一つの秩序ある仕組みを作り出す組織力である。混沌から複雑な構造が自然発生的に形成されてゆく。科学はこの力の源泉を掘り当てることができるのだろうか。宗教は哲学は数千年前にすでに直観能力によって神仏の中に見出している。
イリヤプリゴジンは、無秩序と混沌の中から、自己組織化の過程を通じて、秩序と組織が自発的に生じる、と述べている。
[個々の物質は情報を持つので情報に従って反応・相互作用を行い成長する]
◎個々の物質は情報を持つので、物質が寄り集まるとき、それの持つ情報に従って反応・相互作用を行い、独りでに秩序だったシステム・組織に成長する。分子が互いを認識し合う(化学反応する)のは、二つの分子の表面を構成する原子群の間に働く結合力と原子の空間的配置である。結晶は、同種の無数の粒子から成り立ち、立方体の構成要素がお互いにぴったりと合致するように、規則的な配列を生み出す。
[過剰エネルギーは不安定を産み出す]
7)ベルギーの物理学者・化学者プリゴジンは「散逸構造」という。動的平衡システムは過剰なエネルギーを抱え込むと不安定になりそのエネルギーを散逸(消費・放出)する方向(安定な状態が分岐して新しい状態)に自分自身を組み替える。それによって、多様性が生まれ、無秩序から秩序が生まれる。
◎ベナール対流がよい例だとしてよく知られている。やかんに入った30度の水に40どの水を少し入れるとそれは拡散してゆき、両者は混ざり合って均一になろうとする。エントロピーの増大方向である。これを平衡状態(均一化・無秩序化)になるという。
◎しかしやかんを下から温めると、いずれは平衡(均一)状態ではなく対流という構造化へ向かう。これを無秩序から秩序へと移行したという。
[不安定が多様性を生み出す方向へと動いて安定化をはかる散逸構造]
散逸構造は、不安定を解消する方向へと構造変革をする。不安定は多様性を生み出す方向へと動いて安定化をはかる。不安定な四角形は対角線を入れて二つの三角形に分割することによって安定する。
[エネルギーが流入し続ければ一極集中(全体統一)へと向かう]
◎さらに過剰エネルギーが流入し続ければ、時間を追うごとに一極集中(全体統一)へと向かう。一枚の平たい紙に回りから力を加えると、しわを増やすことでどんどん丸くなるように。
[不安定を取り除くと混沌へと回帰する]
◎不安定(過剰エネルギー)を取り除くと、混沌(個別化・多様な要素への分裂)へと回帰する。逆の意味でエネルギーの過剰が激しくなりすぎても統合し切れずに混沌(ビッグバン直前の混沌宇宙)が発生する、お湯が沸騰して蒸発するように。
[余剰生産物が文化を生み出した]
◎人間に文化が発生したのは余剰生産物を生み出し続けたからである、狩猟から農耕へと。日本でも、農業生産の無事や豊作を祈願し、さらには感謝のためのさまざまな儀式が誕生した。田の神の迎え入れと送り出し、虫送り、雨乞いの祈願、新嘗祭、秋祭りと生産活動に関連してどんどんと文化活動が生まれていった。これもプリゴジン的にいえば、余剰エネルギーの散逸活動である。
[新しい若い分野では余剰エネルギーの投入・流入が激しい]
◎新しい若い分野(例えば携帯電話)では余剰エネルギーの投入・流入が激しくさまざまな企業が新製品を矢継ぎ早に発売する。その製品には日進月歩で新しい機能がどんどん付加されてゆく。
[共鳴・引き込み・同調・共振によってねずみ算的に広がってゆく]
◎とはいっても、購買力には限度があるので、企業は少しでも多く売るために互いに激しい販売・製品開発競争を繰り広げる。買う側はその製品群の中から自分が納得した品物を見つけると、それを口コミ・マスコミが広げる。これは共鳴・引き込み・同調・共振といえる。ドングリの背比べからいったん頭一つ、鼻の差で他の製品群よりも抜きん出た製品があれば、その製品はねずみ算的に広がってゆく。
[臨界点→成熟した生産活動→分野独占・寡占状態→安定期(現状維持)への突入]
◎ついには臨界点に達すると「ウインドウズ」のように独占・寡占状態になる。そうなれば、成熟した生産活動分野では部分的改良・デザインの変更などに限られ、注目を引くほどの変革はほとんど出てこない。安定期(現状維持)への突入である。「ウインドウズ」はそろそろ安定期に入りかけたのかなという印象を受ける。これはダーウィン進化論によく似ている。