宇宙原理があなたの中を貫流する

このブクロを通じて宇宙を網羅する基本法則を提示していきたい。

第十三章 階層構造的生成を見せる宇宙 [96]古代ギリシアは宇宙についてさまざまな哲学的見解を出した

[96]古代ギリシアは宇宙についてさまざまな哲学的見解を出した
[古代ギリシアは宇宙についてさまざまな見解を出した]
古代ギリシアは宇宙についてさまざまな思想を提示した。(右脳的)ギリシア神話を生み出し、そこでは天地創造が語られ、主神ゼウス並びにオリンポスの神々が活躍する。他方自然や人間についての(左脳的)合理的思考も重視された。ここでは宇宙についての哲学者の意見を拝聴する。
[紀元前6世紀にギリシア最古の哲学派が誕生する]
1)ミレトス学派は、ギリシア最古の哲学派で、紀元前6世紀に都市国家ミレトスに誕生する。タレスを開祖とし、アナクシマンドロス(前610年頃-前564年頃)や、魂が個人を統治し、気が宇宙を包括するといったアナクシメネスへと受け継がれる。
[すべては始源から成り立ち、そこから生じ、そこへと滅び去る]
ミレトス派は宇宙を動かす原理、万物の始源(アルケー)を探求する自然哲学を核とした。西洋における最初の哲学とされる。その哲学はいう、存在するすべては始源から成り立ち、そこから生じ、そこへと滅び去ってゆくと。
[魂の不滅と輪廻転生(永劫回帰)を信じたピタゴラス]
2)宇宙の根源は数だとして数学特にピタゴラスの定理を生み出たので、幾何の嫌いな人にはにっくき敵ピタゴラス(前560頃-前480頃)は、魂の不滅と輪廻転生(永劫回帰)を信じた。
[魂の浄化のため厳格な禁欲生活を実践]
◎転生からの解放と天界への救済方法として、魂の浄化のため厳格な禁欲生活を実践した。そういう点で思想家ピタゴラスは同時に宗教家でもある。というよりも当時は宗教と哲学は渾然一体となっていた。哲学は思想で、宗教は実践である。
[ヌース(理性・精神)が魂を持つものを支配し秩序づける]
3)アナクサゴラス(前500頃-前428頃)はいう。自然を不生不滅・無数無限の種子の混合分離の流れと見、その運動・秩序の始源としてヌース(理性・精神)を立てた。ヌースが魂を持つものすべてを支配し秩序づけ、混沌に旋回運動を導入して秩序が生じ、それがどんどん広がって宇宙・世界が形成された。
[愛が世界の中心にあると和合・結合し、憎しみが中心を占めると分離・離散する]
4)エンペドクレス(前493頃-前433頃)はいう。世界(万物の始源)は火・水・空気・土の四元素から構成される。彼は「世界の中心で愛を叫ぶ」とはいわなかったが、愛(牽引力・結合力)が世界の中心にあると和合・結合し、争いの憎しみ(反発力・分離力)がそれに代わって中心を占めると分離・離散すると説く。このような相反する力(愛憎)が互いに入れ替わる。
[不可分の原子が機械的な結合・分離(生成・変化・消滅)運動をする]
5)デモクリトス(前460頃-前370頃)はいう。不変不滅の量的違いのみを有する不可分の原子が無数に存在する。それが機械的な結合・分離(生成・変化・消滅)運動をする無限で空虚な空間がある。
[感覚で捕らえる現象界と理性によって捕らえるイデア界]
6)プラトンはいう。知性は無限定な素材に限度を与える、普遍を特殊化する、無限を有限化(分別)する。移ろい行く無常の現実を存在させる根拠・原因であり、個物(特殊)の背後にあって個別的事物を顕在化させる純粋に永遠不変の非質料的・観念的存在としてイデアを仮定した。感覚で捕らえられる現象界と理性によってしか捕らえられないイデア界との二元(二階層)論を説く。
[イデアの直観には魂を身体から脱し純化させねばならない]
◎感覚的世界の個物(特殊)はイデアを部分的に所有(分有)することによってはじめて個物となる。イデアを認識(直観)するために魂(精神)を身体(感覚)の影響から脱して純化しなければならないと考えた。これはインド思想「梵我一如」とかなり近いものがある。仏教ではこれを悟りという。
[悟りを開いた哲学者が国を統治すべき]
プラトンは、悟りを開いた(魂を浄化した)哲学者(古代ギリシアでは哲学が宗教を兼ねた、というよりも、宗教もすべての学問も哲学であった/哲学は実践・実現すべきものであった)が国を統治すべきだとした。イエスが前4年の生まれだから、プラトンキリスト教誕生よりも四百年も前の人物で、釈迦と同時代人である。
[背負う歴史の違いが人を異なった世界へと導く]
プラトンは学問(=哲学)的雰囲気に包まれた世界を生き、釈迦は宗教的雰囲気を強く持つ世界を生きたことが二人をこのような違いに導いたのだろう。二人が背負う歴史の違いが二人を遠く隔てる世界へと誘った。とはいえ、哲学も宗教も思想ではあるが。
[世界を包含する仏が一切の衆生・万物とともにあり、一切の衆生・万物も仏を共有]
◎古代ギリシヤ以外の宇宙論も少し紹介する。仏教の中の華厳経(中国唐代の僧法蔵が開いた華厳宗)は、広大な真実の世界を包含する仏が一切の衆生・万物とともにあり、さらに一切の衆生・万物も仏を共有(分有)し得る(一切即一、一即一切)と説く。仏をイデアと置き、一切(衆生・万物)を個物と置き換えると、プラトンの思想と大きな隔たりはない。
[宇宙は空間と霊の二面を持ち、生成流転がありながら永遠の一者としてとどまる]
◎イタリア、ルネサンス後期の思想家ブルーノ(1548-1600)は異端審問の結果火刑にされた。その彼はいう、宇宙は無限に延長する空間で、無数の原子の離合集散によって万物は成り立つ。万物にはそれらを結ひそれらを動かすスビリト(宇宙霊)が貫流する。宇宙は宇宙空間(物質面)と宇宙霊(精神面)という二面を持ち、生成流転がありながら宇宙は永遠の一者としてある。
[哲学者たちの直観的洞察能力に畏怖する]
◎彼ら哲学者(宗教者)の主張を読むと、彼らの直観能力が鋭く研ぎ澄まされていたのに驚く。しかしながら彼らにはそれを表現する適切な言葉を持っていなかった。時代的制約によって、今では奇妙に響く表現にならざるを得なかったのだろう。だが直観した内容は皆同じであったはずである。