宇宙原理があなたの中を貫流する

このブクロを通じて宇宙を網羅する基本法則を提示していきたい。

第十三章 階層構造的生成を見せる宇宙 [100]宇宙に存在する二つの矛盾・対立・相補・拮抗する力

[100]宇宙に存在する二つの矛盾・対立・相補・拮抗する力
[宇宙はエネルギーを平衡化する力と非平衡化する力とが共存する]
◎宇宙はエネルギーを平衡化する・差異をなくす・一様化する・無秩序化する・安定化する・拡散する、エントロピーを最大へと向かわせる力を持つ。エントロピーは増大するが、宇宙が膨張するために、受け入れ可能な最大許容エントロピー値も同時に増大する。差し引きで最大許容値の方が大きいから非平衡化する・秩序化する・差異化する・多様化する力も存在可能となる。
[秩序は自発的に形成される]
◎その内でエントロピー=ゴミとすれば、宇宙ゴミ箱(体積)は膨張によって大きくなり続けるので、捨てられるゴミの量も増加し続けられる。どこかが無秩序になるのと引き替えに、他の場所が秩序を形成する。宇宙のエントロピーは最大許容値よりもはるかに小さいので、秩序は自発的に形成される。これが統一力の根源だと考えてよいだろう。
[分解=縮小=情報減少=一様化と、統合=膨張=情報増大=多様化が共存する]
◎宇宙はエネルギー減少・エントロピー増大の力と、それに反するエネルギー増大・エントロピー減少の力という二つの矛盾・対立・相補・拮抗する力が共存、自己同一する。
◎エネルギー減少・エントロピー増大力は宇宙固有の自然的力で、エネルギー増大・エントロピー減少の力は膨張によってもたらされる。宇宙=ゴムと仮定すると、ゴムはもとの大きさに戻る力(宇宙固有の自然力)を持つ。ゴムを広げるともとの大きさに縮まる力(弾力)が働く。広げる力(膨張力)と縮まる力(縮小力・弾力)とが二つの力の源泉である。
◎エネルギー減少=エントロピー増大=分解=縮小=情報減少=トップダウン=一様化で、エネルギー増大=エントロピー減少=統合=膨張=情報増大=ボトムアップ=多様化である。
[万物は争いと必然にそくして生起する]
◎紀元前5〜6世紀のギリシア哲学者ヘラクレイトスはいう、「知らねばならない。たたかいが共通的であり、またあらそいが正義であることを、そして万物はあらそいと必然にそくして生起することを」と。
[自然が持つ崩壊へ向かう傾向と闘うことが人間にとって生きる]
◎「たたかいが共通的」、「あらそいが正義」とはどういうことだろうか。自然は崩壊(分解)をもたらすと彼は考えた。自然は無秩序化をもたらす。自然が持つ崩壊へ向かう傾向と闘う・あらそう・対抗することが生きる。生きるとは自然の持つ力・必然(法則)にあらがう(秩序化する)。山を高く高く盛り上げてゆくことが、成長であり、発展である。
◎とはいえ、これは人間側(片側)から見たものであり、宇宙全体から見れば、自然(万物)の生々流転(生起)の流れを(対立する力の)たたかい・あらそいという言葉で述べ、それが共通的・正義(必然・当然)だといつたのだろう。
[成長・進歩・進化は自然的力にあらがう・闘う]
◎子どもたちは砂場で浜辺で土・砂を盛り上げてゆく遊びを好む。赤ん坊は寝ころびから起き上がり、立ち上がりたがる。成長・進歩・進化は自然的力にあらがう・闘う。その闘う力を、アメリカの心理学者ロジャーズ(1902-1987)は、「成長原理(傾向・欲求)・自己実現欲求」という。その闘う力の源泉は何であろうか。
[強制・批判は人を鎖国へと追い立てる]
◎人は強制・批判から解放されると、表皮から芽を出す種子のように、殻から角出し槍出すカタツムリのように、創造的・洞察的な適応手段を発見する力を持つと、ロジャーズはいう。自然は自己展開する内在力(智慧)を持つ。ただし強制・批判は扉を閉じる閉鎖(鎖国)へと人を追い立て膨張を止めさせる。
[日本人は背景の崩壊(無常)を強く感じながら生きてきた]
山のあなたの空遠く幸い住むと人のいう。我とめゆきて涙さしぐみ帰りきぬ。山のあなたのなお遠く幸い住むと人のいう。
◎ドイツ新ロマン派の詩人・小説家カール・ブッセの詩「山のあなた」は、詩人・英仏文学者上田敏(1874-1916)の格調高い名訳で有名になった。
◎私たちは高くへ、そして遠くへ(も)とめ行く。これが生きることだろう。しかしながら、生きる背景には避けることができない崩壊が厳然とそびえる、アルプスの山々のように。日本人は生きる背景にある崩壊(無常)を強く感じながら生きてきた、そこに芸術(「平家物語」など)を見出してきた。
平家物語の冒頭には、「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらわす」という。
◎また、鴨長明方丈記では、「ゆく川の流れは絶えずして、しかも元の水にあらず。よどみに浮かぶうたかたは、かつ消えかつ結びて久しくとどまるためしなし」と読む。
[現代人は明るい昼ばかりを期待し、暗い夜から逃げ去る]
◎今や日本人は自然の持つ崩壊を忘れたかのように生きる、昼ばかりを期待し夜を堪え忍んだり、逆にそれを楽しんだりしようとしない。夜にこそ月は美しいのに。ススキは枯れてこそ美しいのに。ものには陰がついて回るのに。
◎自然はその(潜在的)崩壊力を時折私たちの前に見せつけて、改めてその力の大きさを思い知らせる、人間の思い上がりをへし折る、バベルの塔のように。