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第十四章 トップダウン哲学とボトムアップ科学  [101]ソクラテスの無知の知

第十四章 トップダウン哲学とボトムアップ科学
[101]ソクラテス無知の知
[知識は最終根拠を持たないとの無知の自覚]
ソクラテスは、対話での質問(対決)を通して相手に、自らの持つ知識の根拠が無限後退する事実を突きつけ、「自分は本当には知らなかったんだなあ」と本当の知識(最終根拠)を持たないことの、無知の自覚を促す。
[自分を知るには、自分の内部にある蓄積した知識体系を表現・行為する]
ソクラテスは対話相手が根拠のないあいまいな知識を捨て去って、自己を吟味探求し、よく生きることを求める。自分を吟味探求するには、自分の内部にある過去から蓄積した知識体系を表現・行為することでしかなし得ない。
[無知の自覚→挫折→自己否定→謙虚]
◎無知の自覚によって挫折(それまでの態度の崩壊)し、それを受け入れる自己否定から謙虚(過大自己評価の崩壊)が生まれ、それを跳躍台として一段上昇した人と、それによって落とし穴にはまり込んだ怒りや苦痛からソクラテスを恨み、ついには彼を告訴して死に追いやった人とがいる。
[最終的根拠はない]
◎「最終的根拠はない」ことを言い表す「アルキメデスの点」は、無限後退(原因・条件の鎖が無限につながってどこまでさかのぼっても終わり・源流がない)するか、循環(堂々巡り)するか、強制中断するか以外に方法はない。
注)「これ以上遡行できない、一つの基礎的なもの」によって全ての派生的な諸信念の体系が根拠付けられることになることから、この基礎を「アルキメデスの点」と呼ぶ。
[深く追求によって「たぶんだろう」の知識・情報を基盤に生きる事実を悟る]
孔子はいう、「知るを知ると為し、知らざるを知らずと為す。これ知るなり」と。
◎知っている事柄と知らない事柄を厳密に区別できるのは、深く追求した後に、「たぶんだろう」の知識・情報を基盤に生きる事実を悟ってからである。
[ポチにいわれて素直に掘り続けた花咲か爺さんは小判をざくざくと掘り当てた]
◎「ここ掘れ、ワン」と、拾ってきて育てたポチ(本来の自己)にいわれて素直に掘り続けた花咲か爺さんは小判(本物の知識)をざくざくと掘り当てた。小判を掘り当てさせる能力(直観能力)を持つイヌからは素晴らしい本当の知識の木が育つ。その木(自然物)から作った臼(人工物)からは小判のもち(有用な知識)がつきあがる。
[枯れ木にも花を咲かせる本物の知識]
◎その臼から出た灰をまいたならば、死んだ木(無用の知識)にもみごとな花(生きた実りある知識)を咲かせられる。それに対して、偽りの枯れ木に偽りの苗を接ぎ木しても育つのはあだ花ばかりなり。
[直観能力が花咲くと無知の知が得られる]
◎「無知の知」も「本物の知識」もともに、自我によってなされる合理的思考を超えた時点で開花する直観能力そのものや、それによって得られる智慧(最終根拠)をさす。自我が作り出す知識は自我という狭い範囲内でしか通用しない。