宇宙原理があなたの中を貫流する

このブクロを通じて宇宙を網羅する基本法則を提示していきたい。

第十四章 トップダウン哲学とボトムアップ科学 [104]階層構造的社会秩序(和)の創設を主張する儒教

[104]階層構造的社会秩序(和)の創設を主張する儒教
[群集は前頭連合野の働きが弱く判断停止して他人を模倣する]
◎組織されていない群集は、判断力が弱く、興奮性が強く、衝動的で、他人の言動という尻馬にのり、依存性が強く、無責任な言動をとりがちである。それは前頭連合野の働きが弱く判断停止して下位階層が主導権を取り、他人を模倣するからである。
[組織は構造を持ち、役割分担し、各自がある程度の自律性(自己判断権限)を持つ]
◎集団が組織として構造を持ち、役割分担し、各自がある程度の自律性(自己判断権限)を持って行動するのでなければ単なる群集、烏合の衆である。これは情報についてもいえる。組織立っていない、体系化されていない情報群は単なる無秩序なスクラップである。学級においても学年始めの段階では生徒たちはメダカの群である。それぞれにおいて混沌を秩序化する手腕が問われる。
[混沌に秩序を置くには哲学(法則)が必要]
◎混沌に秩序を置く、無秩序を組織化するには哲学(法則・原理・核)が必要である。もちろん宗教でもよい(昔はたいていそうであった)が、今は科学がその地位を奪って採用される。上司・指導者となれば、如何なる哲学・科学的知識を持つかが問われる。哲学がないと一貫した方針、安定した判断が下せず、常に揺れ動く。
[宇宙原理はあらゆるものの中を貫流する]
◎宇宙はトーナメント形式で結合と分離という拮抗(矛盾的自己同一)機能を用いて核を中心に統合した自律的下位システムを階層構造的に編成し多様化をはかる方式で自分自身を混沌(カオス)から秩序(コスモス)へと自展自開してゆく。
[一滴の水にも宇宙を映し出す]
◎この方式(原理)は一人の人間の中でも貫かれる。宇宙原理があなたの中を貫流する。というより、あらゆるもの(万物)にこの方式が貫かれる、諸行は無常する、一滴の水にも宇宙が反映する。梵と我とは一如なり、個物はイデアを分有する。
[一人の人間の中では前頭連合野が行為の最高(最終)判断者・命令者]
◎「責任者は誰だ」との問いは、その行為の最高(最終)判断者・命令者は誰なのかと問う。その者が結果に対して責任を取り制裁を受ける。一人の人間の中では前頭連合野がその人である。責任者がいつも留守の所も多いが。
[自律性のないところに責任感は生まれない]
服従する者、依存する者に責任感は生まれて来ない。服従・依存する下位組織は最高位に全権限を投げ上げる。責任感を持たせるとはその者に自律性を与える。自律性のない所に責任感は生まれない。自律と責任は2人3脚である。日本にも「自己責任」という言葉が口にされる時代に入った。
[儒教は礼による社会秩序の回復・確立を目指す]
儒教孔子を開祖とする中国の(道徳)思想で、家族に対する正しい心・即ち上下左右的愛=孝悌(父母に孝行をつくし、兄弟の仲がよい)を社会に拡大・平行移動した仁(自他の区別のない思いやり・愛情)を核(理想)に、現実社会には礼による社会秩序の回復・確立を目指す。
[儒教は家族愛を基調(核)とする思想]
◎また学習によって先王の道を知り、実践的徳目としての仁(究極の形)を行ない、段階的に自己を修めることによる家・国・天下の秩序維持を説く。キリスト教と同じように愛(その具体的行為としての礼)を基調とする思想である。
[個性を殺す同と個性を保ち(多様化し)ながらも全体の調和をはかる和]
孔子はいう、「君子は和して同せず。小人は同して和せず」と。
◎「同す」とは、個性を殺して、相手に合わせる一様化(一色化)で、「和す」とは、個性(独自色)を保ち(多様化し)ながらも全体の調和(構図)をはかる。個性の有無は自律性の有無である。孔子は個性よりも全体を大きく優先させるわけではない。
[和を以て貴しとなす]
◎十七条の憲法を定め、深く仏教に帰依(信仰)し、現存する有名な寺院をいくつも建立した聖徳太子(574-622)は憲法第一条でいう、「和を以て貴となす、忤ふることなきを宗とせよ」と。さらに第二条では、「篤く三宝を敬え」と説く。なお三宝とは仏・法・僧である。
[分を尽すとは、自己限定した能力・立場の中で最善を尽す]
孔子はいう、「君は君たれ。臣は臣たれ。父は父たれ。子は子たれ」と。
◎彼の時代であれば、それぞれの階層(立場)にいるならばその限定された階層で最善を尽くせであるかもしれないが、現代であれば、その時々で表面化する下位機能をフルに発揮せよと解釈したい。
[分をわきまえるのか分を尽くすのか]
孔子の場合は「自己限定せよ」(分をわきまえよ)に重点を置いたかも知れないが、私は自己限定した(君・臣・父・子という個性を持ったそれぞれの)能力・立場の中で「最善を尽くせ」(分を尽くせ)に力点を置きたい。俳句は限定(17文字)下で、どれほど豊かなイメージを盛り込むかが問われる。限定を受けない個性はない。限定するからこそ個性が輝き出す。
[現実への執着を切り離すと自由自在の「きんと雲」で飛び回れる]
◎「西遊記」の孫悟空が乗る空飛ぶ雲(きんと雲)はひと飛びで10万里以上も進む。これによって空間を超越することを言い表す。老荘思想はその雲に飛び乗る方法を教えた。現実世界から離陸する、現実への執着を切り離すと自由自在の「きんと雲」で飛び回れる。
[孔子は現実社会内に理論を限定し、道家と棲み分けをする]
孔子は弟子の学者顔回(前514-前483)が悟りを開いたのを認可したので、孔子自身も悟りを開いただろう。そうならば、方(社会規範)上の雲に乗ることもできただろうが、孔子は自分を「方の内に遊ぶ者」だと、方の範囲(現実社会)内に理論を限定した。
[儒教の上に道教が位置する]
◎その点で、孔子道家と棲み分けをした。フロイトユングが結果的に棲み分け、小乗と大乗が棲み分けたように。このことによって儒教の上に道教が位置するという階層構造を成し思想の幅が広がった。

哲学用語図鑑

哲学用語図鑑

Amazon