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第十七章 自然原理を反映する歴史 [129]難産の末に生まれた西洋近代化

[129]難産の末に生まれた西洋近代化
[新しいものは古いものの挫折によってもたらされる]
◎足早に一覧したヨーロッパの近代化をもう少し詳しく見てゆこう。新しいものは古いものの挫折によってもたらされる。新しい芽は挫折の裂け目から生えて来る。散逸構造もそのようにいう。
◎近代化は難産の末に生まれた。中世末期のヨーロッパは危機的状況に陥る。異端者を追及・処罰するためなされた宗教裁判は13世紀以降南ヨーロッパを中心に広く行われた。農民一揆は地位向上を掲げて頻繁に繰り返された。現代日本と同じように都市の人口過剰と農村の過疎化現象が起こった。14世紀にはヨーロッパ全域にペストが大流行した。また教皇側と皇帝側とが争い、皇帝権力が衰退し、その(統合の核の崩壊)結果諸侯が乱立し、諸国では絶え間なく戦乱が発生した。
[依存から自律への動きは必然の流れ]
◎中世末期のヨーロッパ全土は全身傷痍の状態であった。近代の幕開けは暗いトンネルをくぐらなければならなかったが、トンネルの向こうは白い雪国であった。
◎近代は、市民(中心)社会(下位階層)と資本主義(上位階層)の時代である。西洋の近代化は、教会からの解放、つまり教会の持つ知識への依存から自前の知識(科学)を拠り所とする主体性の確立である。依存から自律への動きは必然の流れである。
[宗教への囚われからの解放と個性・合理性・現世利益を肯定する価値の創造]
ルネサンス(文芸復興・文化革新運動)は、14〜17世紀、都市型社会の形成と商業(中心は外国との貿易)活動発展による自立した市民階級の繁栄を背景にイタリアに始まりそこから西ヨーロッパに拡大した。
ルネサンス人文主義・人間中心主義によって、宗教観(神による人間支配)に囚われずに人間や自然を見る人間性解放をめざし、個性・合理性・現世利益を肯定する新しい価値の創造を目指す。それ故に、キリスト教文化とは異なる古典文化(古代ギリシア・ローマ文化)の復興という形式をとり、それが西欧近代化の思想的源流となる。底流に宗教(による支配)への反発が潜む。
[中世の教会(神)中心主義から近代の現実的人間中心主義へと離脱]
◎市民階層形成によって中世の教会(神)中心主義から近代の現実的人間中心主義へと離脱しつつあった。ドイツのルターは、神の許しについて悩み抜き、そこから人の意志(自力)をこえたキリストの愛(他力)の現存を確信して、善行(自力)によらずとも信仰(他力を頼む心)のみで救われると個人の信仰を強調した。
[宗教改革と社会変革とによって近代ヨーロッパ社会成立へ向かう]
◎1517年ルターが95か条の意見書を発表し、教皇レオ10世の免罪符販売を攻撃した。それをきっかけに、16世紀の西ヨーロッパ各地に宗教運動が繰り広げられた。免罪符は、教会の有力な財源であり、堕落した教会によって安易に大量に発行された。どこかの国の国債発行のように。
◎人は信仰によってのみ救われ、聖書のみが神の国を指し示すと主張して、ローマ教皇の権威を否定し、権威と伝統を重んじるローマ-カトリック教会から分離して、聖書と信仰を拠り所とするプロテスタント教会を設立した。ここでもある意味親(カトリック教会)からの子(プロテスタント教会)の独立宣言的な面もあろう。
◎各都市に多くの宗教改革者が輩出して、社会変革と呼応して、近代ヨーロッパ社会成立を目指す旗頭に立った。これは新しいぶどう酒を収める新しい革袋(改革・革新)を必要としたということだろう。
[混乱から秩序と安定を求める]
◎中世では封建制度が、近世(16世紀から18世紀までの二世紀間)には(領主貴族階層の弱体化と市民階層の未成熟の狭間に生まれた)絶対主義が支配した。封建制度の崩壊によって生まれた混乱から、秩序・安定・統一を求める領主貴族や農民・商人の要求が後押しとなり絶対主義が誕生した。
[現状維持階層と現状打破市民との対立]
◎しかしいったん秩序・安定・統一が回復すると、国民の自律を認めず、依然と続く身分制度と特権階層の保持を続ける絶対主義王制(トップ階層)とそれらの特権的支配の打破を目指す新興市民(主に中間階層)との間に対立が生じた。
[自由・平等を根底にした中央集権的統治機構をもつ近代国家が生まれた]
封建制度という古い制度を引きづった絶対主義(王制)が崩壊した後に、人間の自由・平等を根底に置き、討議の場である議会を中心に据えて、行政機関と司法機関と軍隊制度とが整備されていった。そしてそれらを一局集中で管理する中央集権的統治機構をもつ近代国家が生まれた。しかし安定はいつしか惰性へと道を譲る。