宇宙原理があなたの中を貫流する

このブクロを通じて宇宙を網羅する基本法則を提示していきたい。

第十八章 精神・魂に語りかける民話・昔話 [136]月世界を目指す内向的かぐや姫と出世を求める外向的桃太郎

[136]月世界を目指す内向的かぐや姫と出世を求める外向的桃太郎
[竹取物語は、地球(自我世界)から月(自己の世界)への帰還説話]
竹取物語は、(地球)自我世界から(月)自己世界へ帰還する物語である。かぐや姫は竹の中から誕生し、竹取の老夫婦に養われる。3か月の速さで美しい姫に成長する。貴公子たちによる求愛に対しては、「雷を持って来て」、「三千年に一度咲く花を取って来て」、「打たずに鳴る鼓を持って来て」と難題を言い掛けて退け、帝の結婚の申し込みでさえも拒む。
[公案を通過できずに美しい女性(自己)を手に入れられない男性(自我)]
◎彼女の出す難題は禅宗(特に臨済宗)の公案に似る。貴公子たちは公案を通過できずに美しい女性(自己)を手に入れられず、かぐや姫は八月十五夜に月の都から遣わされた使者(来迎者)たちに伴われて昇天(往生)する。このような、男性(自我)がいったん手に入れた美しい女性(自己)を男性の失策によって天へと去らせてしまう物語はいくつもある。
[重層的多元的視点を持つ竹取物語]
◎この物語(他の物語もそうであるが)は重層的多元的視点を取る。貴公子の視点から見れば、かぐや姫はこの物質世界ではどうしても手に入らない「本来の自己」で精神世界に住む。しかし姫を物質世界に住むとも解釈でき、その場合かぐや姫は手に取ることができない単なる「高嶺の花」である。
[自我の未成熟で肥大した空想好きな我がまま娘]
かぐや姫自身の視点では、姫が自我成熟への途上と見れば、甘やかされ過ぎて社会性が身につかない自我肥大に陥った、家・自分に閉じこもりがちな空想好きですぐに別世界へ向けて夢想する女の子である。
[自分の脱皮を希求し精神世界を目指す]
◎そうではなく、自我成熟した後で自我を脱皮する途上だと見れば、この世のどのような(物質的精神的な)ものにも目を向けない、執着をすべて振り払って本来の自己への帰還を目指す女性である。
[外向的タイプに属す桃太郎・金太郎と内向的タイプの典型のかぐや姫]
かぐや姫と同じくらいよく知られた桃太郎は金太郎と同様にユングのいう(外的な事物や人物へ強く関心を向け、また外界から影響もたいへん受けやすい)外向開放的タイプに属すが、かぐや姫の方は(内面に向かう閉鎖的)内向的タイプの典型である。
◎そのようなタイプと関連する体型と気質には三種類(内胚葉型-内蔵優位型-肥満型-外向性-そううつ気質、中胚葉型-筋肉優位型-がっちり型-粘着気質と、外胚葉型-頭脳優位型-やせ型-内向性-分裂気質)がある。
[愛情が精神の成長をもたらす]
◎竹というきわめて固い殻(社会への拒絶を暗示)にこもっていたかぐや姫は、冷えた体に暖炉の火が暖かさを注ぐように、愛情(暖かく包む思いやりにくるまれること)によって短期間で精神的成長を遂げる。
[柔らかい桃の皮ならば社会的適応はたやすい]
◎柔らかい桃の皮ならば、桃太郎のように社会的適応はたやすかったかもしれない。竹藪は薄暗いが、桃は春に花が咲き初夏に実をつけるから、明るい日差し、太陽をいっぱい浴びた果物といえる。しかも花も実も明るさを強調する。
[自我が順調に成熟した桃太郎と自我の超越に向けて悪戦苦闘したかぐや姫]
◎桃太郎はきびだんごを持ち、道中で犬・猿・キジを家来に鬼ヶ島で鬼を退治し家を裕福にする。このように桃太郎は自我が順調に成熟し大勢の仲間を伴って社会的出世を果たした。他方、かぐや姫は世俗的価値を拒絶して孤高の中で自我の超越に向けて悪戦苦闘した。
[脳幹・大脳辺縁系が高度に発達した桃太郎と大脳新皮質の機能を表す犬・猿・キジ]
◎桃太郎の話は脳の構造からも説明可能である。桃太郎は脳幹・大脳辺縁系が高度に発達した体格のよい力士タイプであり、犬・猿・キジは大脳新皮質の機能を表す。これら三匹(厳密には二匹と一羽)を伴うことによって脳のすべての機能が全開できた。西遊記でも、三蔵法師孫悟空(サル)・猪八戒(イノシシ)・沙悟浄(カッパ)がお供する。
◎本来的には人間も犬やウサギなみの嗅覚能力を持つ。能力は退化したのではなくただ眠るだけで、訓練次第で犬なみになれる嗅覚システムを持つ。供を連れた桃太郎は脳的にはすべての機能が満開したことを意味する。
[お爺さんお婆さんを喜ばせた桃太郎と、逆に悲しませたかぐや姫]
◎鬼退治によってお爺さんお婆さんを喜ばせた桃太郎と、去り行くことで逆に悲しませたかぐや姫。親・養父母・祖父母を悲しませることなしに月の世界にはいけないのだろうか。まだまだ外的世界での出世が親を喜ばせる。仏教は内的世界での出世(現実世界の超出)を本物の出世だというのだが。