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第七章 自立(自律)と依存は閉鎖[開放]度の違い [51]競争のダーウィンと共生の今西

[51]競争のダーウィンと共生の今西
[競争原理のダーウィン進化論と共生原理の棲み分け理論]
ダーウィンの進化論は(勝利したもののみが適応を勝ち取る)競争原理に立脚しているが、その理論に疑問を抱いた生物学者京大教授今西錦司(1902-1992)がそれに対抗する形で提唱した「棲み分け理論」は(個性的に共存する)共生原理に基づく。
[依存の進化論]
ダーウィン進化論は、環境に最もよく適応したものが(自然)選択されて生き残る。環境=神と置き換えると、神がよし(適応)としたものが生き残る、神による生物の創造の変形版ともとれる。
[主体性の棲み分け理論]
◎環境(=神)が生物を作るダーウィン進化論に対して、今西進化論は生物が環境に誘導されるのではなく、自ら環境を選択する主体性の進化論である。これは思想的背景の違いから来るのか。仏教は自ら仏になる小乗(自力救済)を持つ。とはいえ、環境に適応する面で両者は共通の基礎の上に立つ。
[ダーウィン進化論は生物の競争面を指し示す]
ダーウィン進化論は、偶然がさまざまな変異を作り出し、その中から適応生存者がトーナメント形式で、出発地点(単細胞生物)から到達地点にまで登り詰める。人類はすべての生物から勝ちをつかみ取り最上階層に登り優勝した、生物界の優勝者である。
[順位競争したという干支]
◎中国に起源を発する「干支」はネズミ・ウシ・トラと続くが、この順位は競争によって決められ、コール寸前までウシが一位だった。しかしウシの背中に乗っていたネズミがコール寸前で降りて一着になった。ネズミには忠義心がないのか。人類もネズミと同様にチンパンジーの背中に乗ってコール寸前で降りて最高位を獲得した。
[生物は(環境適応)受動性と(環境創造)能動性を合わせ持つ]
◎干支では自由意志による競争だったが、ダーウィン進化論は、生命を単に環境に適応する受け身的存在とする。それでは環境への適者はその環境からは抜け出せない。実際には環境を作り出す能動的働きをもする。このように生物は環境適応という受動性と環境創造という能動性を合わせ持つ。
[生物は特殊化・個性化への道も進む]
◎適者生存は進化を生み出す大きな要因だろうが、特殊化・個性化への道を進むには、新しい世代を生み出すメスに対するオスの魅力度も大きな要素になり得る。自然(環境)による選択だけではなく、メスによる選択もあり得る。メスも環境の一要素だとすれば別だが。
[メスによる選択が特殊化・個性化に対して強い影響力を発揮する?]
◎自然(環境)は生存か消滅かの二者択一として強い影響力を発揮する。しかし生存が確定した段階からは、さらにメスによる選択が特殊化・個性化に対して強い影響力を発揮するのではないだろうか。オスにとって、自分の(制止されることなく継続を保証する)遺伝子を託せるのはメスなのだから。
[棲み分けは場所時間を区切って共存する]
◎今西の棲み分け理論は、血縁的あるいは生活様式面で似た二つの生物種が同じ地域に分布せず、境を接して互いに棲むか、同じ場所を時間を区切って、つまり空間的時間的に異なった生存方法を選択する。
[ダーウィン進化論をくつがえすほどの強力な対抗馬ではない今西棲み分け理論]
◎これは生存競争(自然選択)のダーウィン進化論に対抗して提示した異議申し立てである。とはいえ、棲み分けが競争の結果出来上がったと考えられないこともない。残念ながら今西棲み分け理論はダーウィン進化論をくつがえすほどの強力な対抗馬には成り得なかった。
[環境もその中に含むさまざまな要素をもとに下位区分・細分化ができる]
ダーウィンはある環境に適応するのは自然選択によって勝ち抜いた一種類であると見なすが、その環境を細分化・複雑化すれば何種類もの生物が共存できる。環境はいくつもの要素(ねぐら・餌・敵・時期・空間・気象条件など)を持つが、どの環境もその中に含むさまざまな要素をもとに下位区分・細分化ができる。棲み分け理論はここを根拠にしているといえる。
[補い合いながら互いに利益を交換する異種間の共存・共生]
◎異種間は敵どうしでもあり得るが、種類の違う生物どうしが相手の足りない面を補い合い(補償し)ながら互いに利益を交換する共存・共生関係も存在する。例えば、アリがアブラムシ(アリマキ)を保護し、お返しに甘い分泌液を吸う、ヤドカリがイソギンチャクを運んでやるが身を守ってもらう。
[異種間の共存・共生は一つのシステムとして機能する]
◎「牛+フンコロガシ+草」の三者関係、循環関係は、牛が草を食べてフンをする→フンコロガシがそれを玉にして地中に埋め食糧にする→草がそれを吸収して成長するという円循環(振り出しに戻る循環)を作る、牛・フンコロガシ・草を要素とする一つのシステムとして機能する。
[細胞もミトコンドリア葉緑体+鞭毛を要素とする真核細胞システム]
◎原核細胞に他の原核細胞が寄生・共生して、それらは次第に退化(依存化・下位階層化)しミトコンドリア葉緑体、ゴルジ体、鞭毛などという要素・下位システムになった。これはミトコンドリア葉緑体+ゴルジ体+鞭毛を要素とする真核細胞システム(共生体)であると、マーギュリスがいう。
[自然界は競争原理だけではなく共生原理も機能する]
◎進化には、ダーウィンの考える競争原理(自然選択)による進化だけではなく、当然棲み分け・共生などの共生原理も機能する、矛盾的自己同一から考えれば。他の生物を環境と見て、その環境(生物)に適応する方向への進化をとげることで、結果的には共生となる共進化である。
[進化は大きな突然変異によってもたらされると、ケリガーはいう]
◎進化は小さな突然変異の積み重ねによって生じる(ダーウィン自身はそこまで知らない)が、ケリガーは、進化は大きな突然変異によってもたらされるという。徐々に変化した形跡がない、小さな突然変異による進化では膨大な時間が必要となりうまく説明できないことに対して、彼は発生段階での大きな変異を持ち出す。
[発生の段階はあらゆる遺伝情報が使用可能]
◎(誕生以前の)発生の段階はあらゆる遺伝情報が使用可能である。単に私の仮説だが、発生が始まると上位階層の遺伝情報(普遍情報)から使われて徐々に下位情報(特殊情報)がひもとかれる、巻物を広げてゆくように、川が上流から下流に流れてゆくように。
[誕生後には低位階層の遺伝子のみが使われる?]
◎遺伝子のある階層より上の階層は一度使われると、密封されて再使用が不可能(自己限定)となる。繰り返し使われるのは低位階層のみとなる。
[宇宙は要素をまとめて一つの統一体にする自己組織化機能を持つ]
◎私のもう一つの仮説は、宇宙は要素をまとめて一つの統一体にする自己組織化機能を持つので、ダーウィンのいう、偶然に生まれたいくつもの小さな突然変異(要素)がある時突然一つのシステム(一つの構造・機能を持つ遺伝子群)として統合される。これが個体発生の時に発現する、あるいは古いシステムと置き換えられる。
[遺伝情報も言葉と同じような仕組みを持つ]
◎更なる仮説は、遺伝情報も言葉と同じような仕組み(トーナメント形式)を持つ。言葉は、文字→単語→句→文・節→段落→章→作品と、上昇するほど結合力が増す階層構造を成す。遺伝システムは会社組織[課員→課長→部長→取締役(→専務)→副社長→社長(→会長)]のようにひな壇を登りゆく。
[遺伝子システムはトーナメント形式による統合体系を成す?]
◎遺伝システムも宇宙の普遍原理(階層構造的自己組織化=トーナメント形式による統合)に従うならば(当然従うはずである、釈迦の手を逃れるものなどない)、ケリガーの言葉には説得力がある。再生能力の種間差がそれを暗示する。