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第三章 普遍・基本形と特殊・変形 [17]系統発生(普遍・深層構造)の上に建つ個体発生(特殊・表層構造)

[17]系統発生(普遍・深層構造)の上に建つ個体発生(特殊・表層構造)
[受精卵は分裂を繰り返して形態的・機能的に分化する]
◎(受精)卵から完全な成体に成長して死亡するまでの個体発生は、形態的に1個の細胞(受精卵)が卵割(細胞分裂)により細胞の数を増し、桑実胚→胞胚→嚢胚と段階(階層降下)を踏むと外胚葉と内胚葉とに分化する。
◎さらに発生が進むと中胚葉が分化し、外胚葉からは「表皮系+神経系」が、内胚葉からは「消化器系」、中胚葉からは「骨格系+筋肉系+循環系」が分化し分業が生じる。細胞分裂の進行は、トーナメント形式で展開し、次第に階層構造が深く(高く)なる。
[分化すると同時に統一した個体となる]
◎このように受精卵は胚を形成後、さらに分裂を繰り返して胚の各部分(組織・器官)が形態的・機能的に分化してゆき、単純な状態から複雑な状態へ発展・特殊化・細分化して最終的にさまざまな組織を持つ一つの統一した個体となる。
[普遍的系統発生の上に特殊的個体発生が積み上げられる]
単細胞生物から人類への進化という普遍的系統発生(集合無意識・先天的知識体系)の上に特殊的個体発生(個人無意識・後天的知識体系)が積み上げられる。人の赤ん坊は運動面において動物一般の進化を写し取ったかのように時代や国が違ってもよく似た順序で発達してゆく。
[個体発生は系統発生をなぞる]
◎水棲生活には必需品である系統発生中に獲得したえらが人では個体発生途上で今でも出現する、もちろんそれは母体内発生途上で退化(潜在化)するが。
[新生児は配線未完了の上位階層よりも配線済みの下位階層(脳幹)が主導権を持つ]
◎新生児での視覚と運動の協応は(視覚・聴覚の感覚刺激による運動反射をつかさどる)上丘(中脳の一部)・視床枕(間脳の一部)によって制御・誘導される。
◎しかし大脳皮質優位の年齢になると、上丘による眼球運動制御は、上位に位置する後頭眼野・前頭眼野(随意的な眼球運動を支配する)によって重層的に監督制御される。その年齢になるまでは上丘によって視線(注意)が親の顔に向けられることで大脳皮質が親から学習できる。
[構造の髄鞘化によって機能が開始する]
◎誕生直後は、皮膚・筋肉に向けて直接に連結する末梢神経が出る脊髄、首から上の筋肉を制御する神経中枢がある脳幹(延髄・橋・中脳)階層で髄鞘化(神経繊維の軸索の表面をおおう電気的絶縁用円筒状被膜化、裸電線への皮膜作り)が起こる。
[下位機能から開始する]
◎体性感覚野と運動野との髄鞘化は出生時にはすでに始まっており、最盛期は一歳半頃までで、完成するのは約二歳である。
[配線がなければ機械があっても機能しない]
◎この時点では配線未完了の上位階層よりも配線済みの下位階層(脳幹)の方が優位・主導権を持つ。構造が出来上がっているといえども、髄鞘化が終わるまでは、接続コードが連結されていない電話機のようなもので、機械(構造)があれども機能せず。
[大脳新皮質の発達順序を決定するのは髄鞘化・ミエリン化]
◎そのような大脳新皮質の発達順序を決定するのは何であろうか。新生児が生まれたときには大脳新皮質という建物(構造・大枠)は完成しているが、その内装(髄鞘化・ミエリン化)については完成半ばである。髄鞘を施す(髄鞘化する)ことによって伝達速度は大幅に向上する。
[髄鞘形成は徐々に実施される]
◎感覚器官の髄鞘形成はすでに母親の胎内にいる間に完了し、新生児は第一次運動野・第一次感覚野の髄鞘化は完成して生まれる。それに対して上位階層にある頭頂連合野・側頭連合野・後頭連合野髄鞘化は7歳児で完成するが、最上位の前頭連合野はその時点でもなおかつ半ば程度である。
[階層は一段一段徐々に完成されながら上昇される]
◎誕生した時すでに脳の全部署が完成していれば、現実世界での様々に異なるレベルにある情報を規則化・階層化できない。階層は一段一段徐々に完成されながら上昇される。脳内では領域によって情報の統合度合い(単純・複雑/低次・高次)と種類が異なる。
[上位階層ほど統合能力は高い]
◎一次領域では統合度合いが低く、前頭連合野が最高の統合度合いにある。いったん階層構造的情報処理体系が出来上がれば、その後は階層に応じて情報を付加するだけでよい。分類能力が出来上がっているのだから。
[誕生後の赤ん坊は反射運動で動く]
◎生まれたての赤ん坊は手をしっかり握り、腕と足はぎゅっと曲げて身体にくっつける。口に乳首を入れると自動的に吸いついてくる。手や足の平にエンピツを押しつけてやると指を曲げて強く握る。
[赤ちゃんは大脳からの神経支配がなく、脳幹が身体の筋肉を支配する]
◎この姿勢・反射運動は、まだ大脳からの神経支配がなく、脳幹が身体の筋肉を制御することを表す。下位階層から次第に上位階層へと配線工事が進んでゆく。
[進化では後から登場するものほど上位に位置する]
◎下位から積み上げる法則は進化にも当てはまる。例えば、人間(霊長目真猿亜目ヒト上科ヒト科)は類人猿から分岐進化した。チンパンジーから分離後に、止揚(進化)したのが人類である。
◎私はこれは逆だと考える。もちろん人間からチンパンジーが分岐したという意味ではない。進化では後から登場するものほど上位に位置する、但し同じ枝からの場合だが。
[進化の主流から枝分かれして特異な適応をする]
◎樹木か鉄道か、あるいは百階建ての超高層ビルを思い浮かべて下さい。一本の太い幹、一本の長い線路、一本の長いエレベーター。九九階でチンパンジーは降りて(分岐して)独自の道を歩み始める。チンパンジーは人間に最も近い生物で遺伝子(DNAの塩基配列)は1%の違いがあるだけである。彼らは特異な適応をした結果、進化の主流から枝分かれした。
[進化度の違いは自己限定度(エントロピー)の違い]
◎人間に至るまでの一本の太い系統樹がある。人間は途中で降りず(それ故に最後まで出現せず)に最上階までたどり着き、その結果生物進化の頂点に位置する。西田幾多郎の「絶対無の自己限定」を使うと、アメーバ(原生動物葉状根足綱アメーバ目)は絶対無を大きく自己限定(特殊化)した存在である。進化度の違いは自己限定度(エントロピー)の違いで、人間はそれが最低水準にある。
[進化の屋上は、エデンの園・極楽浄土・天国・神の国]
◎これには後日談がある。実はその百階建てのビルには屋上がある。人間はその屋上の存在を忘れて(知らずに)百階で降りて人間へと分岐・特殊化・自己限定した。
◎その屋上は、実を言えば、エデンの園・極楽浄土・天国・神の国だった。そのせいかデパートの屋上には楽しい催し物会場や遊園地になっている所が多い、たまに駐車場にしている無粋な建物もあるが。それというのも、屋上の遊園地を訪れる人がめっきり少なくなったからとか。
[宗教は屋上に遊びに来いと招待する]
◎何と惜しいことをしたのか。早とちりである。そのどじった(堕落した)人間(特殊)を呼び戻して屋上(普遍・最上階層)へと登り詰める方法を提示するのが宗教である。宗教は屋上にある遊園地への道先案内人ですよ。金儲けの道具ではありません。

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