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第九章 能動・意志の意識と受動・本能・自動の無意識 [65]意識優位の焦点的注意集中と無意識優位の拡散的集中

[65]意識優位の焦点的注意集中と無意識優位の拡散的集中
[集中は脳の多くの部分を一つの目的に向かって動員・統一する]
◎集中は二種類、直列(=意識)と並列(=無意識)とがある。一つは、意識的・一本化・直列型(収束型・求心型)・ボトムアップ的で意識の元に集める。もう一つは、無意識的・多様化・並列型(拡散型・遠心型)・トップダウン的で無意識に下降する集中である。両方に共通する集中は脳の多くの部分を一つの目的に向かって動員・統一する。
[無意識優位で高度に集中させると、心の働きが止まり、澄み切る]
◎瞑想は、意識を完全に覚醒させて、周囲からの感覚刺激はすべて入るが、沢庵禅師や阿波師範がいうように、どれにも注意を向けずに無意識優位で高度に(並列型)集中させる。それによって心の働きが止まり、澄みきった波一つないべた凪状態の海面のようになる。
[注意は、特定部分を明るく照らし出す、情報を求め集めるスポットライト機能]
◎ある情報に注意を向けると、その情報を受け入れる大脳新皮質の特定領野が活性化し学習効果が上がる。注意はスポットライトで、その部分を特に明るく照らし出す、情報を求め集める機能である。
[注意は大脳新皮質を喚起させる]
◎その注意機能は、焦点的注意・注意持続・選択的注意・注意の交替・注意の配分をする。注意がその情報に向いていないと大脳新皮質に変化が起こらない。カエルの面に何とか、馬の耳に東風である。学習能力は集中した上での注意機能駆使である。親がどれほど勉強を強制しても、子どもの側が注意機能を適切に働かせないなら無駄な時間の通過だけに終わる。自主性の必要性がここにある。
[前頭葉内の前帯状回が意志による注意を制御する]
◎幼児は新奇で目立つものに注意が向く本能を持つ。しかしまだ幼いので、意志はまだ意識的に注意の交替ができない。意志(上位階層)による注意を制御するのが前頭葉内の前帯状回である。それによって目・頭の位置を変えずに脳内で注意(活性部位)の移動が可能となる。注意交替は脳内の異なる部位を活性化することによって行われる。
[注意集中は注意力が高まるが、視野が狭くなるズームレンズ]
◎意識優位(直列型)の注意集中によって脳波が(アイドリング状態を表す)アルファ波から(活動性を示す)ベータ波に変わる。さらにドーパミン(アドレナリン・ノルアドレナリンの前段階物質)とノルアドレナリン(交感神経系列の化学的伝達物質)によって強い信号は増強され、弱い信号は減弱される。これによって注意力がますます高まるが、逆比例するように視野が狭くなる、ズームレンズのように。
[注意集中は雑音をできるだけ除去するドルビーシステム(雑音低減装置)]
◎雑音をできるだけ除去するドルビーシステム(雑音低減装置)のように、知りたい(目的とする)事柄が分かっている場合、雑音(必要度の低い情報)は避けて信号(直接必要な情報)だけを受け取りたい。雑踏の中から待ち合わせ相手を捜し出したい。
[意識的注意集中の効果]
ダーウィン進化論は、雑音(突然変異)が進化を産み出すというが、注意(現状維持)は、雑音をできるだけ避けて、信号だけを取り出すために受容野を狭める、信号だけをねらい撃ちにする、焦点を絞る、望遠レンズで目的物を拡大する、グラデーション(ぼかし)をつけずに、コントラストを強めて白黒をはっきりさせる。
[大脳基底核は外界・内界から来る過剰な情報入力を適切に阻止・制御する交通巡査]
大脳基底核は、全身からの外部情報を送る感覚神経と、全身に向かう運動神経との通過経路で、外界・内界から来る過剰な情報入力を適切に阻止・制御することで適正な覚醒状態を保ち、前頭葉を活性化させながら精神を集中させる。要するに、情報交通整理係である。
[坐禅は覚醒中枢に対する刺激を持続させ、意識の覚醒度と集中度を保持する]
坐禅(本式の坐禅は初心者には耐え難いほどの苦痛を強いる脚の組み方をする)は覚醒中枢に対する刺激を持続させ、意識の覚醒度と集中度を保持する。覚醒には、脳幹網様体を興奮させ間接的に大脳皮質機能を活性化させる脳の覚醒と、交感神経を興奮させる体の覚醒とがある。
◎座禅では体の覚醒を必要最小限度に抑える。極端に言うと、体を眠らせて脳だけを起こしておく。金縛りをご存じですか、あれに近いものです。
[神は言葉を混乱させてバベルの塔の完成をくい止める]
旧約聖書創世記に「バベルの塔」が記されている。大洪水後、ノアの家族だけが生き残った。ノア家が人類の再出発である。その子孫が天にも届くような高い塔を築き始めたのをおごりだと感じた神はそれを阻止するために言葉を混乱させ地方に分散させて完成をくい止める。これは過度の集中(独占)は良くないとの戒めとも取れる。
[バベルの塔は物質的自我の実現を象徴する?]
◎私たちは高くなり(上昇し)たい、拡大したいという欲求を持つ。バベルの塔はそれを象徴する。上昇欲求・拡大欲求を(塔で象徴される)物質面で自我が実現するのを戒めるという意味もそれは含む。
[天に上ることを望んだ英雄ベレロフォンはペガサスに振り落とされる]
ギリシア神話に翼を持つ天馬ペガサスと英雄ベレロフォンが登場する。ベレロフォンは愛馬に天に上ることを望んだのでゼウスの怒りを買うことになり、ペガサスは上昇途中で彼を振り落とした。
[傲慢とは鼻を高くする、天狗になる]
◎日本では傲慢を「鼻を高くする」・「天狗になる」といって嫌う。うぬぼれを叩くのは「鼻をへし折る」故に、低い鼻は自慢すべきである。日本人の鼻が低いのは自然選択の結果だったのか。ならば鼻の低い人は鼻高々である。
[英語が世界共通語化している]
◎聖書によれば、バベルの塔の時代までは言語は一つ(魂語・霊語は万人共通語だといわれる)だったという。現在世界には六千八百種類もの言語が存在する。その言語が今ではどんどん消滅し、英語が共通(普遍)語としての地位を着実に築き、ハブ(自転車のスポークが集まる中心部分)としての役割を果たす。
[英語を身につけないと井戸の中の蛙になる]
◎すでに科学界では英語をものしていないと、世界に通用しない。インターネット世界でも英語を身につけていないと井の中の蛙でしかない。翻訳ソフトに頼るか、英語をマスターするか。
[個性が多様性を生み、便利さが一様性を育てる]
◎個性が多様性を求め、便利さが一様性を要求する。日本はどちらかといえば、便利さの方を追求する。とはいえ、最近では方向転換がはかられているが。一様性から多様性への移行は成熟の現れである、個人においても国においても。

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