宇宙原理があなたの中を貫流する

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第十七章 自然原理を反映する歴史  [128]歴史は過去に現在を積み上げて成長・発達する

第十七章 自然原理を反映する歴史
[128]歴史は過去に現在を積み上げて成長・発達する
[現在は自分の中に過去のすべてを畳み込む]
◎歴史という観点でいえば、現在は自分の中に過去のすべてを畳み込む。個体発生は系統発生(過去からの遺産)を繰り返す。個体発生(個人)の過程の中で系統発生(普遍)をすべて展開する。故に過去(系統発生)を背負わない歴史(個体発生)はない。
◎歴史は繰り返すといわれるが、同じことの繰り返しではなく、刻々と新しいことが付け加わるので、らせん状に拡大しながら繰り返して循環する。
[キリスト教を親と、諸国を子どもたちと見なせるヨーロッパの歴史]
◎ヨーロッパの歴史は、キリスト教(特にカトリック教会)を親として、西欧諸国を子どもたちと見立てれば面白い姿が浮かび上がる。当然のことではあるが、話は一世紀(キリスト誕生)に始まる。とはいえ、キリストもヨーロッパもそれまでの歴史を背負っているが。
ニーチェが「神は死んだ」と宣言した20世紀初頭までの1900年間を特に知識の獲得面に焦点を当てて概観しよう。
[中世は親の庇護のもとに依存する子どもたち]
キリスト教(親)はあれよあれよという間(1〜5世紀)に成人した。それはユダヤ教を基礎(旧約聖書は人類の成長記録とも読み取れる)として持つからである。一からの積み上げではなかった、すべての歴史がそうであるように。
キリスト教が育つ土壌・環境はローマ帝国であった。それは395年に東西に分裂し、その内の西ローマ帝国は早くも476年に滅亡した。その前、392年には、キリスト教は唯一の国家宗教になるほどに成長していた。
◎他方子どもたち(西欧諸国)は中世(5〜14世紀/西ローマ帝国滅亡からルネサンスまで)の間親の庇護のもとで依存(信仰と従順)状態にあった。中世社会は、神という存在によって、秩序が形成され維持されてきた。
[全体を直接支配するまでに至らない独立権力者たちのパズル的集合]
◎9世紀から13世紀までの西欧においては、直下の家臣だけを直接支配する限定的支配権しか持たない国王を最高階層とする多数の独立権力が封建的主従関係を結び、その関係が網目状のピラミッド形というトーナメント形式のようにキリスト教という思想の下に組織化されていた。これは日本の平安から室町時代の状況によく似ている、日本では仏教がその役割を果たしたが。
◎これは神経細胞が全身に散らばり、網目状に張り巡らされた散在神経系に包まれ、機能的分担がなく、刺激に対して単純に反応する腔腸動物ヒドラや、あるいは、神経細胞の小集団が線上にじゅずつなぎになった神経節が地方分権的に体を制御するミミズを連想させる。
[子どもたちはルネサンスによって自立に目覚め、自律に向けて成長し始める]
◎子どもたちは「ルネサンス」(14世紀)によって、親(キリスト教)以外からの知識をどんどん獲得してゆき、自立(個)に目覚め(都市は独立権力者の封建領主から自立し)、自律(市民自身による自治)に向けて成長し始める。
[地理上の発見時代はヨーロッパに視野拡大をもたらす]
◎15世紀、バスコ・ダ・ガマの東方航路発見、コロンブスの新大陸発見、マゼランの世界一周など「地理上発見時代」(これはヨーロッパから見ての命名)は、視野の拡大となり、キリスト教以外の思想に出会う。その後にやって来る宗教改革(16世紀)は親に対する思春期(反抗期)の反抗(完全独立とまでいかない)と見なせる。
[知識(文化)と産業技術(経済)が縦糸横糸となって変革と発展をもたらした]
◎イタリア・ルネサンスは,16世紀中期にほぼ終結を迎えた。15〜16世紀のヨーロッパは技術面での革命時代となり、動力機械の発明とその応用(機械化・動力化)によって生産技術は画期的変革を受けた。デカルト(17世紀)・ニュートンガリレオなどによる自ら発見した自然科学的知識も確立した。
[産業革命は生活のすべての面に変革を招来する]
◎18世紀半ば頃、イギリスで最初に起こり、その後欧米諸国へと波及した産業革命によって、経済的基盤が整えられてゆく。今までの手工業的生産工場は機械制大工場へと大きく発展し、それが生活のあらゆる面、社会生活、経済活動に変革・発展をもたらした。
[親に対する独立宣言をして完全自立する方向へと進んだ]
◎青年期の決定打となるニーチェの「神は死んだ」(20世紀初頭)は親に対する独立宣言といえる。これは教会が持つ知識に頼るのではなく、自らの知性によって完全自立する方向へと進んだことへの象徴的表現である。
◎近代は、ルネサンス宗教改革、一連の科学技術改革によって神殺しが断行された。このことによって、世界を人間の手に収めることが成し遂げられたが、神という秩序体現者の死によって、利己的利益追求に走った結果、再度秩序形成維持を如何にするかの問題が持ち上がった。
[科学的知識が積み上げられ、経済基盤も確立し、神からの完全独立を果たした]
◎近代の幕開け的出来事はルネサンス(14世紀)と地理上発見(15世紀)と宗教改革(16世紀)とで、宗教に影響されない科学的知識が積み上げられ、産業革命が起こって経済基盤も確立し、神からの完全独立を果たした。
[今や親(宗教・哲学)と子(科学)の断絶が深刻な問題]
◎所が、今や親(宗教・哲学)と子(科学)の断絶が深刻な問題となる。声高に叫ぶ子どもの声に、親のか細いささやきはかき消されがちである。弁証法的に進めば、ここから後必要なことは子どもの自立を尊重する親(科学をさらに大きな高い視点から俯瞰する目)との和解である。
[宗教性・宗教心の再来を願う]
◎私がこんなことを言っていいのかどうか迷うのであるが、ニーチェが死なせた神(といっても特定の神ではない)をよみから帰らせたいという気持ちを持っている。というよりも、私たち自身が遠ざけてしまった神にもう一度再会すべきではないかと提案したい。といっても、私は既成のどのような宗教に対しても信仰心は全く持ち合わせていない。